ガイドコメント
宗教色の濃い作品が3作続いた後に、83年に発表された回帰作。マーク・ノップラーの素晴らしいギターもさることながら、スライ&ロビー、ミック・テイラーらの参加により落ち着いた完成度を誇る作品。
収録曲
01JOKERMAN
スライ&ロビーの意味深長な擬似レゲエ・ビートに乗って、ディランが似非宗教家のインチキを告発する。カリブ海の島で書いたという優雅なメロディが心地良い。全篇を支配するリズム・セクションと比較すれば、隠し味に近いギターやオルガンも効果的。
02SWEETHEART LIKE YOU
スライ&ロビーの緻密かつ大胆なリズム・セクションをバックに、いかにもディランらしいメロディが自然体で歌われるバラード。繰り返される「あなたのように素敵な人が……」の一節が効果的。マーク・ノップラーの哀感あふれるリード・ギターも光る。
03NEIGHBORHOOD BULLY
マーク・ノップラーとミック・テイラーのツイン・リード・ギターをフィーチャーしたソリッドなロックンロール・チューン。ディランのエモーショナルなヴォーカルが力強い。中東におけるイスラエルの立場をほぼ全面的に正当化している(と思われる)歌詞が話題になった。
04LICENSE TO KILL
スライ&ロビーのリズム・セクションを軸にしたゴスペル・カントリー調のサウンドをバックに「誰が男から殺人許可証を取り上げるのか?」と歌うバラード。マーク・ノップラーのギターとアラン・クラークのオルガンも好演をみせる。
05MAN OF PEACE
マーク・ノップラーのプロデュースによる繊細かつ大胆なバンド・サウンドをバックに、「時にはサタンは平和の人としてやって来る」とディランが歌う強力なロック・チューン。スライ&ロビーのリズム隊もパワフルだが、ミック・テイラーのリード・ギターも素晴らしい。
06UNION SUNDOWN
スライド・ギターをフィーチャーしたソリッドなロック・チューン。脅迫的なまでに性急なギター・リフとスライ&ロビーの強力なビートに乗って、ディランがパワフルなヴォーカルを披露する。強欲な資本主義社会と堕落した組合を批判した歌詞が話題になった。
07I AND I
スライ&ロビーによる擬似レゲエ・ビートをバックに、さまざまな解釈を想像させる意味深長な歌詞をディランが歌い、フックの“I and I”に自らの想いを込める。ミック・テイラーのリード・ギターが雰囲気を盛り上げ、抒情的なピアノが効果的に挿入されている。
08DON'T FALL APART ON ME TONIGHT
ペダル・スティール・ギターをフィーチャーしたカントリー調のバラードだが、スライ&ロビーのリズムは擬似レゲエ調。出て行こうとしている女を引き止めるラブ・ソング。フックのメロディと歌詞、そしてディランのヴォーカルとマウスハープが素晴らしい。