ミニ・レビュー
ロック・バンドの王様が4年ぶりに登場。王者の風格にふさわしく、ハードなメッセージと強力なリズムが頭の中に飛び込んでくる。最後の「マスト・ビー・ヘル」はジャガー&リチャードの現在のポリシーそのものだ。
収録曲
01アンダーカヴァー・オブ・ザ・ナイト
83年当時、最先端の音楽だったヒップホップの要素を取り入れて作られた曲。そんな大胆な試みに、当時のファンはかなり驚いたらしいが、ヒップホップがすっかり定着した今の耳で聴くとそれほど違和感はない。どんなアプローチをしても、ストーンズらしさを感じられて、やはりサスガ。
02シー・ワズ・ホット
ツアー中に起こった出来事をモチーフに作られたナンバーなのだそうだ。ミック・ジャガーのヴォーカルも、キース・リチャーズのギターも、これぞストーンズ流ロックンロールといった感じでアグレッシヴに迫ってくる。アルバム『アンダーカヴァー』(83年)からの2ndシングル。
03タイ・ユー・アップ (恋の痛手)
キース・リチャーズいわく「ローウェル・フルソンっぽいソウルフルなリフに、お遊び気分でSM的要素を加えてみた」という、セクシャルな歌詞の作品。どこかCCRにも通じるようなファンキーなテイストが魅力といえよう。ロニー・ウッドがベースを弾いている。
04ワナ・ホールド・ユー
キース・リチャーズがヴォーカルを取るストレートなロックンロール・チューンで、ロン・ウッドがベースを担当。キースがギター、ミック・ジャガーがドラムを叩きながら、レノン=マッカートニー風に共作したという本作は、「初期ビートルズ調の曲」とキース自身も発言しているように、シンプルな構成が魅力。
05フィール・オン・ベイビー
レゲエ調のルーズなリズムをバックに、セクシャルな歌詞が歌われる。サウンドはダブ・ミュージックからの影響が色濃い作りで、スライ・ダンバー(パーカッション)やロビー・シェイクスピア(ベース)なども参加。ミックのブルース・ハープと絡み合い、独特の妖しげな雰囲気を演出している。
06トゥ・マッチ・ブラッド
ホーン・セクションを効果的に配した、ファンキーでパーカッシヴなサウンドが印象的なナンバーだが、歌われているのは、実際に起きた血なまぐさい殺人事件。アルバム『アンダーカヴァー』の中でも、新しいサウンド手法の取り込みが成功した好例といえそうな作品。
07プリティ・ビート・アップ
クレジットでは、ジャガー=リチャーズにロニー・ウッドが加わっての三者共作となっているが、実際は曲をロニーが、詞をミックが書いたといわれるファンキーなナンバー。デヴィッド・サンボーンがサックスで参加。ロニーはこの曲がお気に入りのようで、90年代のソロ・ツアーでも演奏していた。
08トゥ・タフ
洋楽ロック・ファンが“ローリング・ストーンズのサウンド”として真っ先に思い浮かべそうなナンバー。キースのギターの感じとか、ミックの歌い方とか、これぞストーンズといえそう。1975年頃には、すでにこの曲の原型がレコーディングされていたというエピソードにも思わず納得。
09オール・ザ・ウェイ・ダウン
「トゥー・タフ」同様、ストーンズ・サウンドの王道をいくナンバーといえるだろう。「俺もあの娘も、今じゃすっかり落ちぶれちまった」と嘆く男の唄だが、曲調や歌い方は、それらを振り払うかのようにワイルドそのもの。そんな、前向きでつんのめりそうな感じがいい。
10マスト・ビー・ヘル
「どんなに多くの問題を抱えた世の中に生きていても、俺たちには自由があり、みんな天国を目指しているのさ」と歌われる、ミック・ジャガー流のメッセージ・ソング。サウンドやメロディは、ストーンズらしさ全開で、この曲のようなメッセージは、いつの時代にも共通したものがありそう。