ガイドコメント
再びプロデューサーにトム・ダウトを迎えた81年発表作品。ポリドールからのラスト・リリースとなったアルバムで、ブルース/ポップス/ロックが溶け合った独自のサウンドを聴かせてくれる。
収録曲
01SOMETHING SPECIAL
オールド・タイムなフィーリングが心地よいオリジナル・ブルース。音楽監督ゲイリー・ブルッカーのセンスを感じさせる洒落た感覚がこの曲を魅力的なものにしている。ユーモアのセンスを感じさせるクラプトンの歌声と軽妙な演奏が新鮮に響く。
02BLACK ROSE
トロイ・シールズとエディ・セッサーが書いたゴスペル調のカントリー・バラード。クラプトンが見事なヴォーカルを聴かせる。スライド・ギターとピアノをフィーチャーしたアンプラグドな演奏も秀逸。カントリーの陽気さとゴスペルの哀愁とのバランスが良い。
03BLOW WIND BLOW
敬愛するマディ・ウォーターズの名曲をカヴァー。ミディアム・アップのシャッフル・ビートに乗って、貫禄さえ感じさせるクラプトンのヴォーカルとギターが唸りをあげる。クラプトンにとっては標準的なプレイだろうが、これはもう名人芸に近いレベル。
04ANOTHER TICKET
ゲイリー・ブルッカーの幻想的なキーボード・サウンドが全編を覆う、ドラマティックなラブ・バラード。クラプトンのヴォーカルもロマンティック・モードに入っている。「ワンダフル・トゥナイト」路線の曲のひとつだが、「ビハインド・ザ・サン」の原型とも言える。
05I CAN'T STAND IT
イカしたリフから始まるミディアム・テンポのキャッチーなポップ・ロック・チューン。当時のAORの範疇に入るMORなアレンジが巧い。ギター・ソロはほとんど聴けないものの、クラプトンのヴォーカルの魅力だけはたっぷりと味わえる。全米10位のヒットを記録。
06HOLD ME LORD
お気に入りのカントリー歌手ドン・ウィリアムズからの影響をクラプトン流に消化してみせたオリジナルのカントリー・バラード。クラプトンの肯定的な歌声と軽快な演奏が心地よいが、隠し味のゴスペル風味も効いている。ドブロ・ギターの音色も魅力的。
07FLOATING BRIDGE
スリーピー・ジョン・エステスのブルース・クラシックをゴスペル調のモダンなアレンジでカヴァー。良質のブルース・フィーリングを感じさせるクラプトンのヴォーカルとギターをフィーチャーした名演。彼のキャリアの中でも最高のブルース・カヴァーのひとつ。
08CATCH ME IF YOU CAN
ゲイリー・ブルッカーとの共作曲。弾むようなミディアム・アップのファンキーなビートに乗って、クラプトンが魅力的なヴォーカルとギター・ソロを聴かせる。多重録音によるクラプトンのワンマン・ギター・バトルが楽しめる。聴く者の心を躍らせるキャッチーな秀作。
09RITA MAE
ヘンリー・スピネッティのファンキーなドラミングが先導するアップ・テンポのロック・チューン。たたみ掛けるような展開は「アフター・ミッドナイト」を思わせる。クラプトンの長いギター・ソロも強烈。スタジオ録音セッションとしては最良の名演を堪能できる。