ガイドコメント
1973年発表の5thアルバム。シンセサイザー、メロトロン、6弦と12弦のダブル・ネック・ギターなどを駆使し、レゲエやファンク的要素を取り入れるなど、前作以上に幅広い音楽を指向した実験作。
収録曲
01THE SONG REMAINS THE SAME
1973年以降のZEPの新たなテーマ曲。ペイジの饒舌なギター・ワークと強靭なリズム・セクションが派手に疾走するイントロから音楽の全面的肯定性が炸裂している。与えれば報われる、という歌詞のメッセージも音楽の肯定性/永続性へと繋がっていく。
02THE RAIN SONG
プラントの繊細な歌声が描く水彩画のように抒情的なバラード。歌の語り手の心情を描くように丁寧に弦を鳴らしているペイジのギターも鮮やか。そして、ジョーンジーのストリングスは歌の世界の背景を丹念に描いているかのように普遍的に鳴り続ける。
03OVER THE HILLS AND FAR WAY
独り言のような生ギターのイントロから始まる曲。強烈なリフと強力なビートに支えられたサウンドに、異次元のギター・サウンドが効果的に挿入される。どこがリアルなのか混乱するエッシャーの騙し絵のような構造の曲。プラントの歌も禅問答のように響く。
04THE CRUNGE
ボンゾの変則的なリズム・パターンから生まれた曲。変拍子を導入した踊れないファンクに、ジェイムズ・ブラウンの「Take It To The Bridge」をデフォルメした歌詞を乗せたZEP流ジョークが楽しめる。そして彼らは最後まで“ブリッジ”を探している。
05DANCING DAYS
身体を捩るようなギター・リフから始まる曲。踊れないファンク「クランジ」とは異なり、この曲なら踊れる。プラントは“夏の宵のダンシング・デイズ”について歌っている。ライオンやオタマジャクシの話はよくわからないが、陽気な曲であることは間違いない。
06D'YER MAK'ER
冗談から生まれたZEP流レゲエ・チューン。“妻に捨てられた男”を描いた歌詞ともリンクする英国の古いジョークから拝借した曲名には“英国製のレゲエ”という意味もある。ここでのボンゾの見事なドラミングはそれだけで充分に価値のあるものだ。
07NO QUARTER
ジョーンジー主導で作られた曲。細部まで凝っている彼のキーボード群によって描き出された神秘的な世界を舞台に、ペイジの“無慈悲”なギター・リフが露払いを務め、プラントが“無慈悲”な物語を歌う。ボンゾの巧みに抑制された助演も光る。
08THE OCEAN
ボンゾの無限のパワーを伝える発言から始まる曲。そのパワーをそのまま音楽化したかのような、ポジティヴな変拍子ファンク・サウンドとプラントの陽気な歌声が快感。終盤の“ドゥーワップ”の全面的肯定性はアルバム『聖なる館』の主題ともリンクする。