ガイドコメント
67年発表の3rdアルバムのリマスター再発盤。キースのドラミングも凄いが、バンドの持つ、ポップな面が感じられ人気の高い1枚。ジャケもかっこいい! オリジナルに10曲おまけ付き。
収録曲
01アルメニアの空
のちにサンダークラップ・ニューマンを結成するピートの友人ジョン・キーンが書いた曲。テープの逆回転、エフェクター、SEなどを駆使したザ・フー版サイケデリック・サウンドをバックに“空に浮かぶアルメニアの街”について歌っている。
02ハインツ・ベイクト・ビーンズ
ハインツ社「ベイクト・ビーンズ」の(架空の)CMソング。「くもの巣と謎」のブラスバンド・サウンドをリサイクルした音楽とナレーションによるもので、作曲者にはピートの名前がクレジットされている。CMの後には「More Music」のジングルが挿入される。
03マリー・アンヌ
アコースティック・ギターとパーカッションによる生音サウンドをバックに歌われるフォーキーなナンバー。うっとりするほど美しい曲で、国一番のかわいい子マリーを歌っている。“shaky hands”というフレーズにトレモロをかけるセンスがいかにもザ・フー。
04オドロノ
ピートが書いた体臭防止スプレー「オドロノ」のCMソング。美人歌手がブッキングしてもらえなかったのは、彼女が使っている体臭防止スプレーが“オドロノ”ではなかったからだ、という歌詞が笑わせる。ラジオ・ロンドンの華麗なジングル付き。
05いれずみ
美しいアルペジオから始まるドラマティックなバラード。ロック・オペラの一部のごとく劇的な構成も見事だが、複雑な韻を巧みに踏みまくる“刺青が男を男にする”歌詞も鮮やか。70年代半ばまではライヴ定番曲だった。ラジオ・ロンドンの荘厳なジングル付き。
06過ぎし二人の恋
美しいメロディと独創的なサウンドとの劇的な構成によるラブ・ソング。キースの大胆で繊細なドラミングとピートのコズミックなギター・ソロも光る。ビーチ・ボーイズの名曲のパロディとしても楽しめる。エンディング後にジングルとCMが挿入される。
07恋のマジック・アイ
ザ・フー版“音の津波”が聴き手に襲いかかる強力なシングル曲。スタジオ録音では史上最高のバンド・サウンドが聴ける。特にキースのドラミングとピートのギターはほぼ完璧に近い。全英では10位、全米では9位のヒットを記録。ボディビルのCM付き。
08アイ・キャント・リーチ・ユー
当初は飛行機事故の歌だったらしい奇妙だが切実なラブ・ソング。キャッチーなフックと意味深長な歌詞をあわせ持ち、ポップであると同時にコミカルでもあり実はシリアスでもある、という当時のザ・フーのユニークなスタイルを象徴するような1曲。
09メダック
ジョンが書いたニキビ治療薬「メダック」のCMソング。風変わりな曲を書かせたら右に出る者がいないジョンにしては比較的ノーマルな曲だが、歌詞では大いに笑わせてくれる。米国盤でのタイトルは「Spotted Henry」。邦題がつけば面白いはず。
10リラックス
当時のピートのお気に入りだった初期のピンク・フロイドを思わせるアシッド・ロック・チューン。オルガンを主体にしたサウンドは、特に間奏でサイケデリックかつドラマティックな展開を披露する。ジョンが愛用するロト・サウンド弦のCMのデモ・トラック付き。
11けちのサイラス
ジョンが書いた美しいバラード。キースの劇的なドラミングとバロック調のオルガンをフィーチャーした荘厳なサウンドをバックに、守銭奴サイラスの物語が歌われる。凝ったコーラスも秀逸。アバの「マネー、マネー、マネー」の有名なフックはこの曲から拝借した、という説もある。
12夜明け
ピートが歌う美しいバラッド。アコースティック・ギターを爪弾きながら、ファルセットを巧みに駆使した歌声を披露するロマンティックなラブ・ソング。作者のピート本人によれば「ジャズ・ギターの教本から学んだ複雑なコードを多用した曲」らしい。
13ラエル (その1)
ピートが書いた2作目のロック・オペラ。多様な音楽的語法を駆使したミニ組曲で、次作『トミー』の予告編のようなパートもある。イスラエルと中国についての予言的な歌詞も面白いが、何よりも音楽的な意欲にあふれた曲。アル・クーパーがオルガンで参加。
14ラエル (その2)
94年にリリースされたボックス・セットで初めて発表された「ラエル」の終楽章。東洋的なメロディと曖昧な歌詞が意味深長。「ラエル(その1)」同様、アル・クーパーがオルガンをプレイしている。メドレーのように「トップ・ギア」の狂騒的なジングルが挿入される。
15グリッタリング・ガール
1967年に録音されたまま1995年まで未発表だったピートの曲。独特の浮遊感のあるザ・フー・サウンドに乗って、ピートが“きらびやかな娘”について歌っている。当時の標準レベルの曲だが、光る箇所もある。少し長めのコカ・コーラのCMソング付き。
16メランコリア
1968年5月に録音されたまま94年まで未発表だったピートの曲。ザ・フー版“音の津波”が堪能できる初期ピンク・フロイドばりのサイケデリック・ロック・チューン。キースのドラミングとピートのギターが圧巻。ロンドンの有名なライヴハウスのCMソング付き。
17サムワンズ・カミング
シングル「恋のマジック・アイ」のB面収録曲。ジョンが珍しく10代の恋を描いたポップ・ソング。ロジャーが初めて歌ったジョンの曲でもある。ナッシュヴィル録音によるホーン・セクションが効果的に使われている。実在した車屋のCMソングのリハーサル・テイク付き。
18ジャガー
1967年に録音されたピートの未発表曲のフル・ヴァージョン。ジャガーの素晴らしさを称えたエコー満載のザ・フー版ホットロッド・ソング。キースの劇的なドラミングが素晴らしい。イーリングに実在した車屋の(架空の)CMソングのリプライズ・ヴァージョン付き。
19アーリー・モーニング・コールド・タクシー
1967年に録音されたまま94年まで未発表だったロジャーの曲。フォーク・ロック調の牧歌的なサウンドに乗って、“早朝の冷たいタクシーは辛いぜ”とロジャーが優雅に歌う。曲調と歌詞とのミスマッチが楽しい。コカ・コーラのCMソング(30秒ヴァージョン)付き。
20山の魔王の宮殿にて
1967年から95年まで未発表だった曲。グリークの「ペール・ギュント組曲」の主題を借りたインストゥルメンタル曲。60年代には多くの英国産バンドが採り上げた曲だが、ザ・フーも楽しみながら演奏している。「ボリスのくも野郎」の一節を再利用したジングル付き。
21ガールズ・アイズ
1967年に録音されたまま94年まで未発表だったキースの曲。フォーク・ロック調の爽やかなサウンドをバックに、マニアックなファンの女の子について歌われる。エンディングのドタバタもキースらしい。“オドロノ”のCMソング終盤のコーラスのアウト・テイク付き。
22マリー・アンヌ (オルタナティヴ・ヴァージョン)
米国盤シングル「恋のマジック・アイ」のB面に収録されていた「マリー・アンヌ」のエレクトリック・ヴァージョンを新たにリミックスしたもの。アル・クーパーのハモンド・オルガンやピートとロジャーのコーラスなどがフィーチャーされている、ファン必聴のトラック。
23燃える女
1974年に編集盤で発表された68年録音のピートの曲。バディ・ホリーが死んだ有名なロックンロール飛行機事故をモチーフにしたフォーク・ロック調の曲。最後のパートは『トミー』の「イッツ・ア・ボーイ」の原型。トラック・レコードの(架空の)CMのアウト・テイク付き。