ガイドコメント
71年発表の最高傑作。本作で彼らは初の全英1位を獲得。1曲を除きピートが作曲を手がけている。その1曲を書いたジョン・エントウィッスルは2002年6月に死去(享年57歳)。ご冥福を祈ります。
収録曲
01BABA O'RILEY
ミハー・ババとテリー・ライリーを合体させた曲名を持つ稀有な傑作。シンセサイザーの自動演奏から始まり、雄々しい歌声や躍るようなドラミングがバンドを力強く先導。終盤の狂騒的なアイリッシュ・ジグがザ・フーのサウンドを未知の高みへと引き上げる。
02BARGAIN
キースのドラム・オーケストラが炸裂する強烈なロック・チューン。ロジャーとピートがヴォーカルをシェアし、それぞれの役割を見事に演じている。やや複雑にも感じられる構成だが、鳴っている音そのものを積極的に楽しんでいけば、彼らの進むべき道は見えてくる。
03LOVE AIN'T FOR KEEPING
アコギをフィーチャーした土臭いサウンドをバックに「愛はキープしておくものじゃない」とロジャーが歌う。音の感触はスワンプ・ロックに近い。ザ・バンドに最も接近したザ・フーとも言えないことはないが、彼らにはこの手のサウンドも意外によく似合う。
04MY WIFE
ジョンがザ・フーのために書いた名曲のひとつ。作者のジョンがヴォーカル、ベース、ピアノ、フレンチホルンを受け持っている。恐妻家の被害妄想を大袈裟に戯画化した歌詞が面白い。シンプルなサウンドがメロディと歌詞の個性をより強調している。
05THE SONG IS OVER
幻の名盤『ライフハウス』の中核を担うはずだった名曲。ピートとロジャーがヴォーカルをシェアし、それぞれの能力を最大限に発揮している。ザ・フーならではの躍動感あふれる演奏と複雑で劇的な構成が素晴らしい。盟友ニッキー・ホプキンスのピアノも好演。
06GETTING IN TUNE
幻の名盤『ライフハウス』に収録されるはずだった曲。ニッキー・ホプキンスのピアノから穏やかに始まるが、すぐにキースのタフなドラムスが乱入し、最高の歌声を披露するロジャーを力強くサポートしている。音楽的な比喩を多用した歌詞も楽しい。
07GOING MOBILE
幻の名盤『ライフハウス』に収録されるはずだった曲。カントリー・ロック調のドタバタしたサウンドに乗って、ピートが移動住宅の楽しさを陽気に歌う。この手のサウンドでのキースのドラミングは画期的なまでに新鮮。歌詞の“空調ジプシー”という表現が面白い。
08BEHIND BLUE EYES
絶頂期のザ・フーを代表する名曲中の名曲。透明なアコギと美しいメロディから始まり、滑らかな3声のハーモニーと劇的なエレクトリック・パートを経て、再び冒頭の美しいメロディが繰り返される。「悪党と呼ばれる悲しい男」の想いを描いた歌詞も秀逸。
09WON'T GET FOOLED AGAIN
最盛期のザ・フーの実力を象徴する傑作。シンセサイザーのループで幕を開けるイントロからトドメを刺すようなエンディングまで、最強のバンドによる最高の演奏が堪能できる。8分半が一瞬にも思える稀代の名演。歌詞の教訓は“リーダーには従うな”だろうか。
10PURE AND EASY
幻の名盤『ライフハウス』の中核を担うはずだった曲のオリジナル・ヴァージョン。音楽の素晴らしさについて歌った名曲。『オッズ・アンド・ソッズ』収録ヴァージョンと比較すれば未完の印象もあるけれど、研磨される前の原石だからこその美しさがここにはある。
11BABY DON'T YOU DO IT
マーヴィン・ゲイの名曲のカヴァー。1964〜65年のライヴで演奏していた曲だが、幻の名盤『ライフハウス』にはライヴ音源が収録される予定だったらしい。マウンテンのレスリー・ウェストがリード・ギターを弾いている、スタジオ録音ヴァージョンも素晴らしい。
12NAKED EYE
71年4月26日、ロンドンのヤング・ヴィック・シアターでのライヴ録音。ライヴではおなじみの、ザ・フーにとって重要な曲のひとつ。特に出来の良いヴァージョンでもないが、絶頂期のバンドの勢いは感じられる。
13WATER
71年4月26日、ロンドンのヤング・ヴィック・シアターでのライヴ録音。ザ・フー流のブルース・ロック。ピートのワイルドなギター・ソロがフィーチャーされている。70〜71年のライヴ定番曲で、『オッズ・アンド・ソッズ』にスタジオ録音版が存在。
14TOO MUCH OF ANYTHING
幻の名盤『ライフハウス』に収録されるはずだった曲。ややカントリー・ロック調の土臭いサウンドが特徴的。ニッキー・ホプキンスがピアノで参加。バッキング・トラックは『オッズ・アンド・ソッズ』収録曲と同じだが、ロジャーのヴォーカルが差し替えられている。
15I DON'T EVEN KNOW MYSELF
シングル「無法の世界」B面収録曲。当初は幻の名盤『ライフハウス』に収録されるはずだった曲らしい。マウスハープから始まるカントリー・ブルース調の曲だが、ハード・ロッキンなパートからコーラス主体のパートへの転換の鮮やかさはさすが。
16BEHIND BLUE EYES
71年3月18日、ニューヨークのレコード・プラントで録音されたオリジナル・ヴァージョン。エレクトリック・パートへの導入部分などが弱いものの、ほぼ完成に近いアレンジがデモ・トラック風味で楽しめるし、アル・クーパーのオルガンが聴けるのもうれしい。