ガイドコメント
71年リリースのオリジナル4枚目、再発盤。本作ではオーケストラの導入を試み、重厚な音作りとなっている。「可愛いダンサー」「リーヴォンの生涯」といったヒット曲も生まれている。
収録曲
01TINY DANCER
ペダル・スティール・ギターをフィーチャーしたエルトン流カントリー・バラード。バーニー・トーピンの妻でダンサーのマキシン・ファイベルマンに捧げられている。饒舌なストリングスとゴスペル・クワイア風コーラス隊が強力にバックアップ。全米41位のヒットを記録。
02LEVON
敬愛するザ・バンドのドラマーの名前を借りたバラード。物語風の歌詞とR&B調のメロディも、ザ・バンドの音楽にインスパイアされているようだ。ただし、誇大妄想的なまでにドラマティックなオーケストレーションはエルトンならでは。全米24位のヒットを記録。
03RAZOR FACE
正体不明の“Razor Face”について歌った不思議なバラード。アコーディオンやオルガンをフィーチャーしたサウンドをバックに、エルトンが民話や昔話を物語るかのように歌う。米国産のホラ話や都市伝説のようなニュアンスもあって、怖いけど聴きたい曲。
04MADMAN ACROSS THE WATER
狂人と紙一重の、あるいは天才と紙一重の、飛びきりドラマティックなバラード。たとえばザ・バンドの名曲を誇大妄想狂が編曲したら、こんな風になるかもしれないと思わせる曲。この混乱した美しさを愛せる者は明らかに少数派だろうが、音楽的には初期の最高傑作。
05INDIAN SUNSET
エルトンのア・カペラで幕を開けるドラマティックなバラード。壮大なオーケストレーションをバックに、西部開拓時代に生きたインディアンの戦士を主人公にした悲劇の物語が歌われる。2005年夏、この曲を引用した2Pacの「Ghetto Gospel」が全英No.1ヒットを記録。
06HOLIDAY INN
全米ツアー中のロック・スターを悩ませる退屈について歌った風変わりなバラード。マンドリンやシタールをフィーチャーしたサウンドは充分に個性的だが、さらにオーケストラとコーラス隊が劇的にバックアップしていて、聴き手は退屈している暇はない。
07ROTTEN PEACHES
歌詞はネガティヴだが音楽の高揚感は飛びきりポジティヴなエルトン流ゴスペル・ソング。無神論者でも感心するであろう、「神に慈悲を求めるということ」を教えてくれる。リック・ウェイクマンやクリス・スペディングらオールスター・キャストが参加した曲でもある。
08ALL THE NASTIES
本格的なゴスペルに挑戦した大作。本物の聖歌隊をバックに、都会の少年が男になることについて力強く歌い上げている。自身を同性愛者とカミングアウトする前の、彼の秘密を連想させる意味深な歌詞も効果的。終盤の盛り上がりはすでにポップスの限界を超えている。
09GOODBYE
ピアノとストリングスをバックに、たったひとりでエルトンが歌う孤独なバラード。現実世界における彼の孤独を象徴するような歌詞とメロディとサウンドがここにはある。寂し過ぎる歌詞は過剰なまでに感傷的だが、彼の歌声がそれをパワフルな音楽にしている。