ガイドコメント
初の2枚組LPで、彼の初期の代表作となったヴォリューム満点の1枚。「風の中の火のように」「グッバイ・イエロー・ブリック・ロード」「土曜の夜は僕の生きがい」といったヒット・シングルも。
収録曲
01FUNERAL FOR A FRIEND|LOVE LIES BLEEDING
シンセサイザーをフィーチャーした壮大なインストゥルメンタル曲と狂騒的なロックンロール・チューンを合体させた組曲。ワグナーの影響を感じさせる前者の編曲と構成も見事だが、秀逸なロスト・ラブ・ソングでもある後者のパワフルな演奏も素晴らしい。
02CANDLE IN THE WIND
マリリン・モンローに捧げられた珠玉のバラード。ストリングスの代わりにコーラスとリード・ギターを配したシンプルなアレンジが光る。シングルとして「ベニーとジェッツ」とのカップリングで発表され、全英11位のヒットを記録。のちにライヴ・ヴァージョンも大ヒットした。
03BENNIE AND THE JETS
観客の拍手や歓声を挿入した擬似ライヴ仕様によるR&B調の曲。ベニーという名の女性ロック・スターが率いる架空のバンドについて、ファルセットを多用したヴォーカルで歌っている。米国では黒人音楽系ラジオ局から火がつき、全米No.1ヒットを記録した。
04GOOBYE YELLOW BRICK ROAD
映画『オズの魔法使い』にインスパイアされたタイトル曲。流麗なストリングスとドリーミーなコーラスをバックに、エルトンが鮮やかに歌い上げるバラードの名曲。パートナーに別れを告げているかのようなバーニー・トーピンの歌詞も秀逸。全米2位のヒットを記録。
05THIS SONG HAS NO TITLE
ピアノ、メロトロン、オルガンなど、さまざまな鍵盤楽器をフィーチャーした風変わりなバラード。ポール・サイモンやランディ・ニューマンのタッチを連想させるメロディやサウンドが楽しめる。自身の混乱状態を詩的に表現したバーニー・トーピンの歌詞も秀逸。
06GREY SEAL
ナンセンスな歌詞とフリーキーな音楽を組み合わせたエルトン流ノベルティ・ソング。狂騒的な編曲と不条理な展開が面白い。エルトンの一人二重唱も楽しいし、賢いといわれる“灰色アザラシ”にもわからないようなエルトンの意味不明な歌詞もおかしい。隠れた珍曲。
07JAMAICA JERK - OFF
レゲエ・ドゥワイトとトゥーツ・トーピンによるレゲエ調ノベルティ・ソング。擬似レゲエ・ビートやカリビアンなコーラスをフィーチャーした賑やかなサウンドが楽しめる。レゲエに対するアプローチに悪意がないせいか、ほぼ全面的な肯定性が心地よく響く。
08I'VE SEEN THAT MOVIE TOO
たとえばフィルムノワールの音楽版のような、笑っちゃうほどメランコリックなバラード。いかにも映画マニアが口走りそうな表現を満載したコミカルな歌詞とシリアスな曲調とのミスマッチがおかしい。ウディ・アレンの初期の映画に近い感覚がここにはある。
09SWEET PAINTED LADY
ノスタルジックなメロディが美しいバラード。アコーディオンやオーボエをフィーチャーしたレトロなサウンドが聴き手を酔わせる。船乗りと娼婦の一夜の物語だが、音楽が美しく表現もユニークだから、下世話にはならない。隠れた名曲といえる。
10THE BALLAD OF DANNY BAILEY (19090-34)
若くして殺されたダニー・ベイリーについて歌ったバラード。エルトンの歌声に絡むコーラスとストリングスが面白い。架空のギャングスタの人生を歌にする、という発想がエルトン&トーピンらしい。映画化してみたいと思うほどの情報を詰め込んだ1曲。
11DIRTY LITTLE GIRL
タイトルの通り“汚い少女”についての歌。比喩的な表現だとしても、ストレートに解釈したほうが面白い。粘り腰のビートに乗って懸命に歌うような主題かどうかはともかく、メロトロンの乱暴な使い方も含めて、ヤクザなロックンロール・バンドらしいノリが快感。
12ALL THE GIRLS LOVE ALICE
多くの少女たちに愛された少女アリスの短い人生についての歌。アップ・テンポのロックンロールとスローなバラードを合体させたやや強引な構成が面白い。自由について歌っている、という解釈が妥当だろうか。キキ・ディーがコーラスで参加している。
13YOUR SISTER CAN'T TWIST (BUT SHE CAN ROCK'N ROLL)
ジェリー・リー・ルイスからビーチ・ボーイズまで、ロックンロールとツイストの歴史を1曲の中に凝縮したエルトン流ノベルティ・ソング。フレディ・キングやチャビー・チェッカーらも含めて、160秒間で10曲は聴いたような気分にさせてくれるお徳用ロックンロール。
14SATURDAY NIGHT'S ALRIGHT FOR FIGHTING
珍しい英国的なロックンロール・チューン。英国の田舎に住む労働者階級の若者たちが楽しみにしている土曜の夜を、エルトンは極めて英国的な表現で歌っている。極端に狂騒的な歌と演奏が楽しめる。英国的な歌のせいか、全英7位で全米12位という“英高米低”の結果に。
15ROY ROGERS
1950年代に英国で放映されていた“The Roy Rogers Show”に触発された少年時代を主題にした曲。ペダル・スティール・ギターとストリングスをフィーチャーしたサウンドがノスタルジックな世界へと誘うカントリー調のバラード。エンディングのSEも効いている。
16SOCIAL DISEASE
バンジョーをフィーチャーしたニューオリンズ調の曲。ニューオリンズ産のジャズ、カントリー、ファンクを1曲の中に凝縮したようなサウンド。酒浸りの日々を送る“社会病の見本”の消極的な独白を陽気に歌う。否定的な歌詞を肯定的に歌うスタイルが楽しい。
17HARMONY
エルトンならではの美しいメロディを贅沢に詰め込んだバラードの名曲。オーケストラとコーラスをフィーチャーしたゴージャスなサウンドをバックに、珠玉のメロディを鮮やかに歌い上げる。2分46秒が一瞬に感じられるほどメロディアス。誰もが一度は聴いておきたい。