ガイドコメント
来ますね、御大が。出ますね、御大の紙ジャケ・コレクションが。というわけで、新作も出てしまいますよ、のエルトン・ジョンの69年リリースの記念すべき1stアルバム。ボーナス4曲が追加収録。
収録曲
01EMPTY SKY
1stアルバムのタイトル曲。パーカッションにピアノが絡む導入部からフルートとマウスハープが鳴り響く終盤まで、様々なアイディアを詰め込んだ8分半の大作。多様な音楽的素養を感じさせるメロディとサウンド、そして文学的・哲学的な歌詞が斬新。
02VAL-HALA
エルトンの歌声とハープシコードの調べが聴き手を神話の世界へと誘うバロック調のバラード。ディランの影響を感じさせる歌唱法が、バーニー・トーピンの神話的な歌詞にもよく似合っている。ディラン+バロック+神話という組み合わせが成功した曲。
03WESTERN FORD GATEWAY
まだ見ぬアメリカを歌ったバラード。英国から海の向こうの米国を幻視していた初期のエルトン&トーピンには幻想のアメリカを描いた歌が多いが、これは最も初期の1曲。米国南部のルーツ・ミュージックの影響も感じさせる土臭いサウンドが興味深い。
04HYMN 2000
英国的なユーモアのセンスを感しさせるフォーキーなバラード。ディランのような歌詞をディランのように歌っているが、そのセンスはむしろビートルズに近い。フルートをフィーチャーしたサウンドは過剰気味だが、メロディ・メイカーとしての才能は光っている。
05LADY WHAT'S TOMORROW
ディランばりのヴォーカルとイノセントな歌詞との組み合わせが妙に新鮮に響くバラード。実験的な印象があるのは個性的な歌詞のせいもあるが、すべての音を鮮明に鳴らしているラウドなサウンドの影響もある。トゥー・マッチなサウンドが英国的。
06SAILS
風変わりな視点から描かれたR&B調の船乗りの歌。想像の世界で遊んでいた若きエルトン&トーピンらしいドリーミーな曲だが、すでに楽曲の構成や細部の工夫には光るものがある。聴き手に奇妙な印象を与えることを目標にしているかのような曲のひとつ。
07THE SCAFFOLD
若きトーピンが書いたディランのような歌詞を、ディランのように歌う若きエルトン。このバラードの抒情的な美しさには特筆すべきものがある。たとえそれがディランから得たものだとしても、それを再現できる能力も並ではない。2人の天才による初期の習作。
08SKYLINE PIGEON
ハープシコードの調べに乗って歌われる、バロック期のミサ曲のように美しいバラード。孤独や貧困を囚人やカゴの中の小鳥にたとえたバーニー・トーピンの歌詞も光る。その後のラブ・バラードやエルトン流ゴスペル・ソングの原型ともいえる最初期の名曲。
09GULLIVER/IT'S HAY CHEWED/REPRISE
巨人の想い出を歌うバラード“Gulliver”からジャジィなインスト曲“It's Hay Chewed”へと展開し、最後には1stアルバム収録曲の断片を集めた“Reprise”へと到る組曲形式の大作。エルトン・ジョンというアーティストの未来の可能性を予見させる意欲的な試みだ。
10LADY SAMANTHA
1969年1月に発表された2ndシングル曲。米国のロックやR&Bからの影響を英国的なセンスで消化したパワフルなバラード。当時、メロディ・メイカーとしてのエルトンの才能はすでに開花しつつあった。選曲には定評のあるスリー・ドッグ・ナイトによって同年にカヴァーされた。
11ALL ACROSS THE HAVENS
12IT'S ME THAT YOU NEED
13JUST LIKE STRANGE RAIN
3rdシングル「イエス・イッツ・ミー」のB面収録曲。エレキ・ギターが泣きわめく大仰なイントロから始まる、米国産ルーツ音楽の要素を英国的に翻案してみせたアーシーなバラード。ザ・バンドばりの曲をポスト・サイケデリック調に仕上げる大胆さが当時の彼らしい。