ガイドコメント
ビートルズの『ラバー・ソウル』に触発されたブライアンが“ほとんどひとり”で作り上げた世界遺産級名盤。(1)(8)(11)(13)をはじめ、ため息つきっぱなしの名曲が目白押し。66年5月発表、全米10位。
収録曲
01WOULDN'T IT BE NICE
結婚への憧れを歌った曲。ドラムスとティンパニーが強力だが、それ以上に力強いのがブライアンの歌声。コーラスとサウンドとの一体感や場面転換の鮮やかさなども見事なものだが、何よりも彼の歌声が持っている夢見るパワーが素晴らしい。
02YOU STILL BELIEVE IN ME
ブライアンのハミングと一本弦のピアノによるイントロが美しい。メランコリックな情感が付きまとうファルセット主体のブライアンのヴォーカルに、壮大な滝の如きコーラスが折り重なるドラマティックなエンディングはまさに圧巻。
03THAT'S NOT ME
エコーの海に反響するパーカッシヴなサウンドをバックに、マイクが「あれは僕じゃないよ」と歌う。エコーの海を泳ぐようなオルガンやギターの音色も心地よい。エキゾチックでトロピカルなフィーリングは往年のマーティン・デニーを想起させる。
04DON'T TALK (PUT YOUR HEAD ON MY SHOULDER)
ブライアンのダブルトラックのヴォーカルのみで歌われるバラッドの名曲。沈痛なオルガンや悲痛なストリングスが歌声の背景を丹念に描いている。喋らずに何をするかというと、男の肩に女が頭を乗せるだけ、というイノセントな歌詞もブライアンらしい。
05I'M WAITING FOR THE DAY
ブライアンの歌声にオーボエやフルートが絡み、ティンパニーが劇的な展開を演出する。弦楽四重奏からティンパニーを経てエンディングへと雪崩れ込む終盤の編曲も鮮やか。失恋した女の子を慰める唄だが、語り手の男の設定はかなりイタい。
06LET'S GO AWAY FOR AWHILE
07SLOOP JOHN B
カリブ系フォーク・ソングのカヴァー。アル主導のシングル曲だから『ペット・サウンズ』の中では異色の1曲だが、ビーチ・ボーイズならではのコーラスを活かしたポップ・ソングとしての仕上がりは高品質。全米チャート3位のヒットを記録した。
08GOD ONLY KNOWS
「天国から降りてくるようなサウンド」を目指したブライアンのポケット・シンフォニーの傑作。題名に「God」を使った初めてのポップ・ソング。彼はこの名曲をたった7分で書いたという。サイケデリック時代のビートルズに大きな影響を与えた曲のひとつ。
09I KNOW THERE'S AN ANSWER
ウッディな木管楽器とメタリックな鍵盤+タンバリンとの競演によるユニークなサウンドを背景に、ブライアンが「答えがあるのは知っているけど」と歌う。当初の歌詞はもっと救いがなかった。その頃のこの曲の題名は「Hang On To Your Ego」。
10HERE TODAY
『ペット・サウンズ』の中では比較的シンプルな曲だが、恋のときめきと愛の儚さを象徴するかのような、魅惑的なメロディとめまぐるしいサウンド展開が楽しめる。いったい何を考えているのかよくわからない唯我独尊のベース・ラインがとりわけスリリング。
11I JUST WASN'T MADE FOR THESE TIMES
チェレスタやティンパニが鳴り響く荘厳なサウンドの中で木霊するブライアンの一人多重録音ヴォーカルがこの曲の、そして彼自身の強烈な疎外感を増幅する。テルミンの儚い音色も美しい。名曲だらけの『ペット・サウンズ』の中でもベストの名曲。
12PET SOUNDS
13CAROLINE, NO
名盤『ペット・サウンズ』の最後を飾る名曲。ハープシコードやヴァイブの音色が心に残るサウンドとブライアンの歌声が奏でる美しいメロディがせつない。演奏が終わった後、踏切りの信号音と列車の通過音が聞こえ、ブライアンの愛犬たちが吠えている。