収録曲
01セシルの週末
エレキ・ギターが前面に出たミディアム・ロック。町でも噂の不良少女が、真面目な男性と巡り会ったことで素直な人間に変わっていく物語。転調するサビ部分や8分を刻むピアノが実に心地良い。後にaikoなどがカヴァーしている。
02時のないホテル
アルバム表題曲。平和ボケ気味の日本をホテルに喩え、争いの絶えない世界情勢を訴える社会派ナンバー。ロー・ファイなヴォーカルを駆使したアレンジが特徴的。ユーミン版「ホテル・カリフォルニア」といったところか?
03Miss Lonely
怪し気なサウンドが魅力のブルージィなナンバー。戦争に行ったきり帰って来ない恋人を50年も待ち続ける女性の孤独がテーマ。ゴスペル風女性コーラスやビリー・ジョエルのようなブリッジ部分など、アレンジが粋。
04雨に消えたジョガー
2年前は元気だったランナーが病床に臥せ、死んでいく様を綴ったナンバー。歌詞も曲全体のサウンドも淋しさを強調しないで比較的冷静な印象が強いのが特徴的。その分、エンディングでギターが泣きのソロを展開する。
05ためらい
6/8拍子基調の緩やかなナンバー。恋人の冷たいそぶりに不満を感じながらも、彼を愛してやまない少女のような心持ちの大人の女性を描いたチャーミングな1曲。増田恵子ほか、数多くのアーティストがカヴァーしている。
06よそゆき顔で
結婚を翌日に控えた女性の歌。悪ぶっていたこれまでの自分に区切りを付け、新たな人生を歩もうと決意する瞬間の微妙に揺れ動く心理を見事に描いた1曲。哀愁を伴ったメロディが印象的な王道的ユーミン・ソング。
075cmの向う岸
1篇の小説が書けそうなほどドラマティックで切ないストーリーの悲恋ソング。サウンドがやや軽快だが、テーマは決して放っておけない若者への大切な問いかけを含んでいる。終盤の大暴れ気味のドラムにも注目。
08コンパートメント
ユーミンのレパートリーの中で最も重い渾身のナンバー。テーマは“後追い自殺”。完璧な歌詞とそれに100%マッチしたアレンジが際立つ。“ユーミンは軽くてオシャレ”と思っている人や中島みゆきファン必聴の1曲。
09水の影
アルバム『時のないホテル』のラストを飾るバラード。人間の憎しみや弱さ、孤独感を超越した安らかな歌詞と普遍的なメロディが魅力。リリースから4半世紀後の2005年に、NHK『探検ロマン世界遺産』のエンディング曲に。