ミニ・レビュー
雑誌感覚の新作。今回のテーマは“純愛”。というわけで、タイトルは「舌を入れない接吻」。エイズ時代を象徴するようなテーマとタイトルだ。編集者としての手際は相変わらず鮮やかだけれど、妙にアナクロなレイアウト(編曲)も意図的なものなのかな。
収録曲
01リフレインが叫んでる
松任谷由実の歌詞の凄さが爆発した超有名曲。AメロとBメロを分解した曲構成の斬新さ、そしてその構成が、歌詞の物語をよりドラマティックに響かせることに成功している。熟練の職人芸が光輝く名曲だ。
02Nobody Else
十八番の失恋ソング。雨、駅のホーム、都会の雑踏、意外に明るい曲調など、ユーミン・ワールド全開。相手への怒りにも似た激しい想いやベースの抜けるアレンジなどが特徴的。ベテランらしい完成度の高い1曲。
03ふってあげる
軽快なリズムの失恋ソング。相手の心が離れていることに気付き、悩ませないように自分から別れを告げるという、実に健気で悲しい歌。アレックス・アクーニャのパーカッションが軽快なグルーヴを作り出している。
04誕生日おめでとう
穏やかな雰囲気のミディアム・バラード。かつての恋人の誕生日を心の中で祝うという、切ない傷心ストーリー。シンクラヴィア(当時最先端の高価な楽器)を駆使しつつも、無機質なサウンドになっていない点に注目。
05Home Townへようこそ
恋人の実家へ初めて行く歌。田舎の澄んだ空気と高揚する気持ちを巧みに描いた歌詞と、それにリンクした軽快で明るいサウンドが魅力。恋人の育った場所を見たい・知りたいという女性特有の感覚が生かされている。
06とこしえにGood Night (夜明けの色)
恋人との別れ際の短い会話をテーマにした失恋ソング。最後まで正直な自分を見せられるヒロインが実に魅力的に描かれている。ヴォーカルだけで始まるイントロや終盤の転調などが特徴的。“とこしえ”とは“永久”の意。
07恋はNo-return
軽快な8ビートのシンセ・ロック。躊躇する気持ちと止められない衝動が交錯する恋愛初期特有の心情を、感覚的に描いた歌詞が魅力。サウンド面では、デジタルな8分音符のコード弾きや華やかなブラスなどが特徴的。
08幸せはあなたへの復讐
重量感のあるリズムが特徴的なミディアム・チューン。恋人を忘れようとする一種の失恋ソング。後悔させて復讐したいという言葉の裏にはプライドだけでなく、それほど好きだったいう正直な気持ちが見え隠れする。
09吹雪の中を
吹雪のなか、車に乗って恋人の元へ急ぐ歌。吹雪や焦燥感とはかけ離れた静かなサウンドが特徴的で、車内のしんとした空気を感じさせる。淡々と4分音符を刻むシンセ・サウンドやサビ部分最後の1フレーズが印象的。
10September Blue Moon
アルバム『Delight Slight Light KISS』のラストを飾る、華やかなラテン・ナンバー。ふさぎ込む“きみ”を愛情いっぱいに見守る歌。ライヴ映えしそうな合唱部分やこの上なくハッピーなメロディが魅力。