ミニ・レビュー
遂にCD先行発売となった記念作は『イノセント・マン』から3年振り。前作が50〜60年代ポップス大会だったから、ビリーの本音が久々に聴ける。アップ・テンポからバラードまで。ゲストはレイ・チャールズ、シンディ・ローパーにS.ウィンウッドら多彩。
収録曲
01RUNNING ON ICE
追い立てるように性急なスカ・ビートに乗って、現代の都市生活者を苦しめるストレスについてビリーが早口で歌う。「氷の上を走っている」という比喩には説得力がある。彼は心地よい音作りも巧いが、この手の神経に障るサウンドを作ることにも長けている。
02THIS IS THE TIME
03A MATTER OF TRUST
04MODERN WOMAN
ダニー・デヴィートとベット・ミドラーの共演による映画『殺したい女』(86年)の挿入曲。80年代半ばを象徴するかのような軽快なファンク・ビートに乗って、現代的な女性と古風な男とのミスマッチな恋愛についてビリーが歌う。全米チャート10位のヒットを記録。
05BABY GRAND
06BIG MAN ON MULBERRY STREET
07TEMPTATION
彼女があまりにも魅惑的なせいで、他のことが何もできない状態になっている男の独白を歌った曲。傍からは滑稽に見える恋愛でも、当人はハリウッド映画のヒーローやヒロインを演じているような気分なんだろうな、と思わせるドラマティックなバラード。
08CODE OF SILENCE
シンディ・ローパーとの共作・共演による曲。シンディは歌詞の一部を書き、録音でも個性的な歌声で素敵なハーモニーを披露している。自分自身に誓った沈黙の掟を守り続ける女性に語りかける歌。難しい主題だが、音楽的にも難しい曲のひとつ。
09GETTING CLOSER
敬愛するスティーヴ・ウィンウッドとの共演によるR&B調の曲。ウィンウッドの作風をイメージしたもので、彼のハモンド・オルガンがフィーチャーされている。終盤のビリーのヴォーカルとオルガンとの掛け合いがフェイド・アウトで消えてしまうのが惜しい。