ミニ・レビュー
微妙なバランスで異邦人を装いつつ、東京レディのしたたかさを垣間見せたりするユーミンなのです。越路吹雪ラインで安定するかと見えた一時期を過ぎ、映像的なリアリティ以降に逆流パワーで作ったのが“関係のスタイル”で見せる虚実の世界です。
収録曲
01月曜日のロボット
アルバム『ダイアモンドダストが消えぬまに』のオープニング曲。毎日ひたすら機械的な作業を繰り返すOLが、愛の助けを求める歌。ロボット風に加工されたヴォーカルやソリッドなリズムなど、意図的に無機質にしたサウンドが特徴的。
02ダイアモンドダストが消えぬまに
軽快な16ビートのポップ・チューン。恋人と2人で過ごした南半球でのクリスマスを、独り身になった冬に思い起こす切ない歌。カウンター・ラインの美しいサビや完成度の高い歌詞、多彩なアレンジなど、聴きどころ満載。
03思い出に間にあいたくて
8ビートのミディアム・ポップ。乗っていれば恋人との関係が続いていたかも知れない終電を見送った直後の歌。反復の特徴的な切ないサビ・メロディが、緊張感にも似た心の高ぶりを感じさせる。押韻する英語詞にも注目。
04SWEET DREAMS
ユーミンらしい王道的お別れソング。電話と写真以外、具体的なシチュエーションが描かれてないのが特徴的で、ゆえに(切ない旋律も手伝って)多くの共感を得る。ホイチョイ映画『波の数だけ抱きしめて』劇中曲のひとつ。
05TUXEDO RAIN
雨の中での2人だけの結婚式をテーマにした、メランコリックなナンバー。小説や映画のような希有な設定と起伏の少ない曲調が特徴的。“忍び逢う恋”という逆境を乗り越えての結婚とはいえ、祝福されないのは寂しい。
06SATURADAY NIGHT ZOMBIES
バウンス系ミディアム・ポップ。土曜の夜は日頃の仕事のことは忘れてパーティしましょう、という歌。当時の人気番組『オレたちひょうきん族』のエンディング曲として広く知られる。「スリラー」風効果音がユーモラス。
07続 ガールフレンズ
『VOYAGER』オープニング曲の続編。友人の結婚を祝う軽快なシャッフル・ビートのポップ・ナンバーで、愛情に満ちた皮肉や思い出などを交えながら“オメデトウ”と祝福する。ポリリズミックなシンセが粋。
08ダイアモンドの街角
冬の雨の日にタクシーの中から見た街をテーマにした、物静かなスロー・ナンバー。恋する人の元へ急ぐ焦燥感とそれに相反する気だるいサウンドが独特の世界観を作り上げている。車内の空気感が伝わってくる不思議な1曲。
09LATE SUMMER LAKE
80年代らしいアレンジが光るシンセ・ロック。一夜限りの恋を忘れられない男が、半ばヤケになってその場所へ戻ってくる歌。これまであまり使われて来なかった“きみ”という表現や低い声で日記を読む間奏部分などが特徴的。
10霧雨で見えない
アルバムを締め括るミディアム・バラード。ユーミン定番の雨の失恋ソングだが、恋人が一方的に姿を消した別れであるゆえに“霧雨”となっているようだ。エンディングの泣きのサックスが悲しさを代弁しているかのよう。