
デビュー20周年記念の椎名林檎トリビュート。オーソドックスなのに完璧に憑依してみせるtheウラシマ'S(スピッツの草野マサムネがヴォーカル)にのっけからヤラれ、その後は徐々にアレンジが大胆さを増していくのが心地いい。唯一の海外勢であるMIKAもなかなか洒落た色合い。初期の楽曲が多めです。★

2014年の『逆輸入〜港湾局〜』に続く自演集第2弾。石川さゆりやSMAPなどのアーティストからCM、ドラマまで多彩な提供曲を斎藤ネコ、村田陽一らを迎えてセルフ・カヴァー。ブラスやストリングスを導入した大編成からバンド・サウンドまで、カラフルでエッジーなアレンジと生々しい歌声が描き出す一大音絵巻。

椎名林檎の15枚目のシングルは両A面。“あえて使った”感のある全開のオートチューン、浮雲との掛け合いをフィーチャーしたスピリチュアル・ジャズ・テイストのR&Bチューン「長く短い祭」と、向井秀徳とのコラボレートで制作されたソウルフルなブルーズ・ロック「神様、仏様」の2曲を収録。

ソロとしては5年ぶり5枚目となるアルバム。前半では初期にあった場末のキャバレーのような妖しさと下世話感が復活し、後半にドラマ主題歌「自由へ道連れ」やワールドカップ応援歌「NIPPON」など耳なじみの曲を配し、椎名林檎の成り立ちと今の姿を同時に見せてくれている。特典ディスクのPV集は妖艶。

ワールドカップの開催に合わせ、NHKからの依頼で制作したという「NIPPON」はスピード感あふれる直球ロックンロール。流麗なエレガンスを鳴らす大編成のストリングス隊を従えバンドが荒れ狂うなか、林檎嬢は勝負の瞬間に訪れる針の先端のごとき研ぎ澄まされた感覚を歌う。

98年から彼女が広末涼子やPUFFY、TOKIOなど他アーティストに提供してきた楽曲を、初めてセルフ・カヴァー。新進気鋭のアレンジャーたちが手掛けた楽曲は、セルフ・カヴァーの概念を完全に飛び越えた新たな作品群に。“さすが椎名林檎”と唸らせられる出来である。

デビュー15周年記念のライヴ・ベスト盤。2000年ツアーから2008年さいたまスーパーアリーナ公演までの音源に加え、2009年にNHKで放映された『SONGS』からも2曲を初収録。ロック・バンドやオーケストラなど演奏形態はさまざまだが、念のこもった強烈なヴォーカルの個性は時を超えて圧倒的だ。

『無罪モラトリアム』のジャケット・カラーに近似しているのも趣深い、デビュー15周年を記念した男性アーティストとのコラボ・ベスト。男たちの楽曲にしなやかに順応しつつ、強烈な存在感でその魅力を増幅させている。今をときめく中田ヤスタカとの新曲でも主導権を握るあたりが流石だ。

2013年に現メンバーでの活動10周年を迎えたSOIL&“PIMP”SESSIONSが、アニバーサリー企画第2弾として椎名林檎とコラボ。彼女をヴォーカルに迎えた「殺し屋危機一髪」は編曲を斎藤ネコが担当。ストリングスやティンパニ、ハープなどを導入し、スパイ映画のようなスリリングな曲調がクール。

デビュー15周年目の両A面シングル。「いろはにほへと」はリズムや淫靡な空気感が「歌舞伎町の女王」を彷彿とさせるが、チェンバロやシタールの音色がオリエンタルな色彩を与えている。「孤独のあかつき」は脚本家・渡辺あや作詞。凛々しくもあり内省的でもある詞世界をギター・ポップに乗せている。

ソロ名義では約2年半ぶりのシングルは、NHK連続テレビ小説の主題歌。斎藤ネコによるアレンジ、演奏には東京事変のメンバーも参加している。レトロ調の世界観、ささやくような神秘的な歌声、ゆったりとしたストリングス、これら三つの要素が美しいワルツを奏でている。

本来的には律儀な人なのだろう。東京事変では歌い手という役割に徹しすぎて殺傷力が低下気味だったのが、6年ぶりとなるこのソロ作で久々に炸裂。多彩な曲を芝居っ気たっぷりに演じ分けてみせる。『NHKみんなのうた』で放映の「二人ぼっち時間」は、斎藤ネコとの相性のよさが活きた名曲。★

ソロ名義としては5年半ぶりとなるシングル。鋭さと温かさが同居する詞を、真っ直ぐに慈しむように歌うヴォーカルの訴求力はさすが。元バービーボーイズのギタリスト、いまみちともたかが実にイイ仕事をしている。TBS系ドラマ『スマイル』の主題歌。

これぞまさに椎名林檎完全盤と呼べるデビュー10周年を記念したCD-BOXセット。うちわけは全曲リマスタリング済みのオリジナル・アルバム全3枚とシングル1枚。さらに全アルバム紙ジャケ仕様となっている。ポスターなどの特典も入り、非常にお得なセットになっているのだが、忘れてはいけないのは手に取るようにわかる彼女の遍歴である。スリリングだったデビュー当初から円熟しつつある現在、楽曲やビジュアル・イメージなど彼女独自の世界観に圧倒され、トップ・ランナーとしての強い自負が感じられてならない。

デビュー10周年を記念して編纂された2枚組の企画盤で、これまでのアルバムに未収録だった、いわゆるBサイドの楽曲を一挙にコンパイル。実験的試みも含めて自由度がより高い、隠れた名曲群がまとめて堪能できる機能性が嬉しい。まさに裏ベストと言える一枚。★

椎名が作詞&作曲、斎藤が編曲&指揮で、ほとんどを制作。いわゆるロックの楽器も使われたが、オーケストラを背に椎名が歌う作品で、ゴージャスなポップス、いや歌謡曲と言いたい聴きごたえ十分の出来だ。芸風が広く、彼女のヴォーカルもベストの一枚。★

椎名林檎名義としては「りんごのうた」以来のシングル。デビュー当初より交流のある斎藤ネコを編曲・指揮に起用、大編成オーケストラによる豪華絢爛なバックで、ハートウォームなヴォーカルを椎名純平とともに披露している。カップリング曲も奥深い味わいのある良作。

アクの強いラテン歌謡(1)に、実はメロディの手練れでもあるこの人の底力がくっきり。過剰なストリングスに歌がまったく負けていない(2)の、プログレぽさもおもしろい。音楽だけで十分イメージを喚起できるのだから、おまけDVDは(サービスしたい気持ちはわかるが)蛇足では。

流行歌として消費されない力強い意思と、“流されても良いじゃない”と軽くいなすしなやかさが同居するサード・アルバム。バンドスタイルにこだわらない椎名の姿勢が、閉じていながら恐いくらいに奔放な音楽を生み出した。メロディがすべからく秀逸。生ピアノも、いい味。★

本格復帰第1弾となる約2年ぶりのマキシは、サード・アルバムの先行シングル。3曲ともアルバムとは別ヴァージョンで収録されている。壮麗なストリングスをバックに唄う英語詞のタイトル曲は、本人がプロデュースした短編映画『百色眼鏡』の主題歌。

白いほうが亀田誠治プロデュース(ギター中心)、黒いほうが森俊之プロデュース(キーボード中心)の2枚組。全曲カヴァー。古今東西色彩いろいろ。曲によって表情もさまざま。その濃淡軽重のメリハリこそ歌手椎名の醍醐味。突拍子もないことはやっていません。

細く震えた彼女の歌声で始まる(1)。切なさで膨らんだ心がサビの爆音で大爆発を起こすのは必至。“だってカートみたいだから/あたしがコートニーじゃない”の一節ではマジ鳥肌が立った。(3)でガリガリとギターを弾いてるのはナンバーガールのひさ子ちゃん。

2枚同時リリースのマキシ、ヤンキーなコスプレのこちらは、ゲストにブランキー・ジェット・シティのベンジーを迎えています。2曲目カヴァーはボーイズ・タウン・ギャングのヴァージョンで有名なあの曲をパンクなスタイルで。3曲目の破綻した英詞もチャーミング。

ある種マニアックが分散し過ぎて拾えない……みたいな情報氾濫の中で、昨今の音楽に対して視野が狭くなりがちなオイソガ氏におすすめ。あれもこれもって入ってる“福袋”みたいなアルバムだから、食わずギライ的に聴き逃してた曲との出逢いも楽しめそうです。

メス剥き出し&林檎節炸裂のタイトル曲と胸キュン&イノセントな(2)の対比が見事。CMでお馴染みのジャズ・ナンバー(3)の詩もよい。歌詞カードは奇天烈な日本語だが、締めの英語は「あたしのために死ぬ必要なんてないからね」という必殺フレーズなのだよ。

今や若者たちから絶大な支持を得ている林檎ちゃんだけれど、女の子のかわいさと毒が入り交じった今回のシングルでも、存在感あふれる歌が聴く人を虜にする。自らがピアノを弾き語りする「時が暴走する」は新録で、裏ジャケットには13年前のお宝写真を掲載。

これは、ユーミン・トリビュート・アルバムといっていいだろう。NOKKO、森高千里、露崎春女、大江千里、椎名林檎、奥井香、ゴスペラーズ、m−flo、松崎ナオ、井出麻里子らがユーミン・ナンバーに挑戦。個性が発揮されて、カラフル。

まったくとんでもない処女作である。ストイックでいながらなお湿り気を残した歌声が、聴き手の感情の源泉に強烈な爪痕を刻みつける。全曲シングル・カットOKのポピュラリティと、詩に象徴される寒気すら覚えるアナーキズムが絶妙に絡み合った大傑作。★

自ら“歌舞伎町系”と名乗る椎名林檎の大ブレイク作。3枚目のマキシ・シングルで彼女は世に広く知られるようになったわけだ。デビュー当時は色物ギリギリという感じだったが、この曲でソングライターとしての才能を見せつけてくれた。★

なにやらいろんなテーマでやたらと出ている“NOW”シリーズですが、これはJ−POPヴァージョン。つまり、誰もが知ってる邦楽の最新ヒット曲が満載、というのがコンセプトなんでしょう。全然知らない曲が少々多いような気がするのは、ご愛嬌ってことで。

うわー、なんかわけわかんないです。でも椎名林檎さんの頭の中には、すごい物語があるのだろう。『歌舞伎町の女王』っていうタイトルからしてただ者じゃない(そういう面白がり方はピストン西沢みたいで嫌だけど)。いい加減なことは言えないが、天才肌の人だろう。