ミニ・レビュー
米初シングル/英サード・シングル(1)が「Mona」に換わり収録された、記念すべき64年初作の米発売版の、これはモノラル/SACDだ。米24位になったミック&キースの共作(9)、5人の共作(5)(6)以外はチャック・ベリーら米名ブルース〜R&Bのカヴァーで、その体質があらわ〜。
ガイドコメント
1964年リリースの記念すべき1st。この『イングランズ〜』はアメリカでのタイトル(本作もUS盤仕様)。R&B好きが滲み出る若さあふれるサウンド。彼らのルーツがここにある。
収録曲
01NOT FADE AWAY
バディ・ホリーのオリジナルよりもテンポを速め、ジャングル・ビートをより強調した演奏で自分たちの若さと黒っぽさを演出している。キースは12弦ギターを担当。プロデューサーのアンドリュー・オールダムの師匠フィル・スペクターがマラカスを振っている。
02ROUTE 66
ボビー・トゥループのジャズ・ナンバー。ストーンズはチャック・ベリーのヴァージョンを参考にしたが、ピアノが目立つベリー版とは異なり、エレキ・ギターを全面的にフィーチャーしている。ミックのヴォーカルは比較的淡白だが、独特の色気はすでにある。
03I JUST WANT TO MAKE LOVE TO YOU
ウィリー・ディクソンのブルース曲をアップ・テンポに改造し、ロカビリー調のサウンドに編曲。敬愛するブルース曲のカヴァーでミックの歌声も黒っぽさを増し、ブライアンのマウスハープもフィーチャーしている。若きストーンズの解釈はかなりマニアック。
04HONEST I DO
御大ジミー・リードのブルース曲をオリジナルにほぼ忠実にカヴァー。キースのギターのフレーズも本家の通り。原曲のレイジーなニュアンスまでもコピーしてみせるストーンズのブルースに対する態度はきわめて真摯。演奏技術も当時としてはAクラス。
05NOW I'VE GOT A WITNESS
同じアルバムに収録された「キャン・アイ・ゲット・ア・ウィットネス」を下敷きにしたインストゥルメンタル曲。イアン・スチュワートがオルガンを弾き、ブライアンのマウスハープとキースのギター・ソロがフィーチャーされている。ここでのミックはタンバリン担当。
06LITTLE BY LITTLE
メンバー全員の変名ナンカー・フェルジとフィル・スペクターの共作曲。恋人の浮気に気づいた男の唄をミックが歌う。ブライアンのマウスハープとキースのギター・ソロも目立っている。共作者のスペクターがマラカス、ジーン・ピットニーがピアノで参加。
07I'M A KING BEE
スリム・ハーポの曲をオリジナルにほぼ忠実にカヴァー。ミックのヴォーカル、キースのギター、ブライアンのマウスハープなどもかなり本格的。原曲のレイジーなニュアンスさえも正確に模倣してみせる初期ストーンズのマニアックなアプローチが光る。
08CAROL
チャック・ベリーのオリジナルをほぼ忠実にカヴァー。イントロからエンディングまでのベリーのフレーズを正確にコピーしてみせるキースのギターが光る。ミックのヴォーカルはやや抑えた印象。この曲はその後もライヴでは定番のレパートリーになる。
09TELL ME
ジャガー=リチャーズ名義の初めてのオリジナル曲。ロネッツの「ビー・マイ・ベイビー」をイメージして作ったというミディアム・テンポのバラード。あざといまでに抑揚を鮮明にしたミックのヴォーカルが光る。劇的な盛り上がりを強調した編曲も凝っている。
10CAN I GET A WITNESS
マーヴィン・ゲイのヒット曲をカヴァー。ストーンズが初めてカヴァーしたモータウン・ソングだが、イアン・スチュワートのピアノにドラムス、タンバリン、手拍子を加えたリズム主体のサウンドには原曲の華やかさはない。この貧乏臭さが初期ストーンズらしい。
11YOU CAN MAKE IT IF YOU TRY
オリジネイターはジーン・アリスン(作者はテッド・ジャレット)だが、ストーンズはソロモン・バークのヴァージョンを参考にしているようだ。ゴスペルをベースにしたようなヘヴィなR&Bサウンドが特徴的。ミックのヴォーカルもアリスンよりもバークに近い。
12WALKING THE DOG
ルーファス・トーマスのオリジナルをほぼ忠実にカヴァー。賑やかに囃し立てる口笛までも模倣している。ミックのヴォーカルは快調で、ブライアンのダミ声コーラスとキースのギター・ソロも目立つ。スタジオ・ライヴ感覚で楽しめる陽気なレパートリー。