ミニ・レビュー
75年6月にリリースされた未発表曲・別テイクなどを集めたレア音源集の初CD化。16曲中12曲がCD初登場音源で、(5)はシングル/アルバムなどで聴けるヴァージョンよりも以前に録音されており、ジミー・ペイジ参加説も根強い音源。かなりマニア向けの編集盤だ。
ガイドコメント
初のレア・コレクション。75年リリース作品で、今回が初CD化。デモ音源やアウト・テイクをはじめ、これまで高価もしくはブートレグでしか手に入らなかったものだけに喜びもひとしお。
収録曲
01OUT OF TIME
ジャック・ニッチェも参加した華やかなポップ・ナンバー。四隅を音で埋め尽くす凝ったアレンジはフィル・スペクターの影響が色濃く、それゆえ従来の彼らにはないアメリカ西海岸経由のR&Bフィーリングが楽しめる。
02DON'T LIE TO ME
タンパ・レッドのブルース曲だが、ストーンズはチャック・ベリーのヴァージョンをカヴァー。イアン・スチュワートのブギウギ・ピアノをフィーチャーしたエイト・ビートのロックンロール。なにしろデビュー前からのレパートリーだから、歌も演奏も鮮やかだ。
03SOMETHINGS JUST STICK IN YOUR MIND
ジャガー=リチャーズがこの曲を提供したヴァシュティのためのデモ・トラック。ジミー・ペイジ、ジョン・マクラフリン、ビッグ・ジム・サリヴァンらを含むオーケストラ・セッションでの録音で、大編成バンドによる“音の壁”と若きミック&キースとの共演が楽しめる。
04EACH AND EVERY DAY OF THE YEAR
ジャガー=リチャーズがボビー・ジェイムソンに提供した曲のデモ・トラック。ジミー・ペイジ、ジョン・マクラフリン、ジョン・ポール・ジョーンズらを含むオーケストラ・セッションでの録音で、ストーンズらしからぬポップ・ソングを歌うミックのヴォーカルが楽しめる。
05HEART OF STONE
ミック・ジャガーとキース・リチャーズの共作によるソウル・ナンバー。アメリカにおける5枚目のシングルとして1964年12月に発売され、翌年2月の19位が最高位。ストーンズ・ファンの間では初期の名曲としてこの作品を取り上げる人が多い。
06I'D MUCH RATHER BE WITH THE BOYS
ザ・タゲリ・ファイヴに提供されたキースとアンドリュー・ルーグ・オールダムの共作曲。ジョン・マクラフリンやジョー・モレッティらが演奏に参加したデモ・トラックだが、ストーンズには似合わないポップ・ソングを歌う若きミックのヴォーカルが楽しめる1曲。
07(WALKIN' THRU THE) SLEEPY CITY
ジャガー=リチャーズがマイティ・アヴェンジャーズに提供した曲のデモ・ヴァージョン。アンドリュー・オールダム主宰のオーケストラ・セッションでの録音。オールダムの英国製“音の壁”をバックに、ややポップすぎるポップ・ソングをミックが歌う。
08WE'RE WASTIN' TIME
ジミー・ターバックに提供した曲のデモ・ヴァージョン。アンドリュー・オールダム主宰のオーケストラ・セッションでの録音。カントリー・ポップ調のワルツだが、当時のストーンズの曲としては軽すぎる。当時、未発表に終わったのはそのせいかも。
09TRY A LITTLE HARDER
1964年6月のアンドリュー・オールダム主宰のオーケストラ・セッションでの録音。ジャガー=リチャーズのオリジナルだが、当時のストーンズの曲としてはややポップすぎる仕上がり。1975年にリリースされたシングル「アイ・ドント・ノウ・ホワイ」のB面に収録。
10I DON'T KNOW WHY
スティーヴィー・ワンダーのヒット曲をカヴァー。1969年6月、ミック・テイラーが参加したばかりのセッションでの録音で、『レット・イット・ブリード』に収録されていてもおかしくないほど完成度は高い。1975年に『メタモーフォシス』の先行シングルとしてリリースされた。
11IF YOU LET ME
12JIVING SISTER FANNY
ジャガー=リチャーズの曲だが、ジャム・セッションに近い雰囲気の1曲。1969年5〜6月、ミック・テイラーが参加したばかりのセッションでの録音だが、彼らしいギター・ソロを披露している。ミックの多分に即興的なヴォーカルも楽しめる。
13DOWNTOWN SUZIE
1969年4月に録音されたビル・ワイマンの曲。当時のビルらしい一風変わった曲調で、彼もコーラスで自慢の低音を披露している。タイトルでは“スージー”なのに、何故かミックもコーラスも“ルーシー”と歌っているところなども不思議といえば不思議。
14FAMILY
1968年6月に録音されたジャガー=リチャーズの曲。アコースティックな編曲によるものだが、陰鬱なヴァースと陽気なサビのギャップが大きく、不思議な魅力はあるものの、曲調を把握し難い。ただし、ニッキー・ホプキンスのピアノだけはひたすら美しい。
15MEMO FROM TURNER
ミックが主演した映画『青春の罠(パフォーマンス)』(70年)挿入歌のストーンズ・ヴァージョン。アル・クーパーがギタリストとして演奏に参加した。ソロ・ヴァージョンよりもアップ・テンポのロック・バンド仕様で、歌詞も異なっている。1968年11月の録音。
16I'M GOING DOWN
1970年7月に録音されたジャガー=リチャーズのオリジナル曲。この時期のストーンズらしいパワフルなロック・チューンで、ミックのヴォーカルもチャーミング。ボビー・キーズ、スティーヴン・スティルス、ビル・プラマーらが演奏に参加している。