ミニ・レビュー
リマスタリング&SACDハイブリッド仕様再発シリーズより、ミック・テイラーを迎えた布陣の初ツアーだった69年秋の全米巡業の精髄を収める70年発表ライヴ盤。熱狂的観衆を前にした鋭い演奏のキレにただ聴き惚れるのみ。“オルタモントの悲劇”まであとわずか10日ほど。
ガイドコメント
70年9月リリースの2枚目のライヴ・アルバム。1969年に行なわれたUSツアーのマジソン・スクエア・ガーデンでの公演を主に収録。ライヴ・バンドとしてのストーンズの魅力あふれる1枚。
収録曲
01JUMPIN' JACK FLASH
おなじみ「Greatest Rock'n Roll Band!!」のアナウンスで幕開けるマジソン・スクェア・ガーデン公演。バンドの演奏はライヴ録音だが、ミックのヴォーカル・パートは実際の音源とは差し替えられているのが残念だ。
02CAROL
1stアルバムでも聴けるチャック・ベリーのカヴァー。このライヴ演奏版での威風堂々たるルーズさは、もはや彼らのオリジナルと呼びたいほどのハマりぶり。新加入のミック・テイラーが非凡なギター・プレイを連発!!
03STRAY CAT BLUES
少女の性問題を取り上げたセクシャルなナンバー。スタジオ版ではキースが弾いたパートをこのライヴ版ではミック・テイラーが担当。キースのルーズさに対する、テイラーの流麗さ。甲乙つけがたい魅力に勝負は引き分け。
04LOVE IN VAIN
伝説のブルースマン、ロバート・ジョンソン作の曲を大幅に改編し、感傷的なムードを強めた名カヴァー。このライヴ版では、キースのプレイをさらに大胆に発展させたミック・テイラーのスライド・ギターが甘酸っぱい。
05MIDNIGHT RAMBLER
実在の絞殺魔をヒントに生まれた曲だからでもなかろうが、じわじわと締め上げるように盛り上がるタイトな演奏が最高なライヴ版。途中で聞こえる日本語での歓声「カッチョイイ〜!!」の主ならずともそう叫びたくなる。
06SYMPATHY FOR THE DEVIL
「黒くぬれ!」をねだる観客の声を無視して始まるライヴ演奏版。スタジオ版での準主役楽器コンガの欠員を、ドラムと二本のギターでパーカッシヴに補うアレンジが秀逸。キースとテイラーのギター・ソロ合戦も圧巻!!
07LIVE WITH ME
黄金期ならではのスワンプ・ロック・ナンバー。スタジオ版では控えめだったミック・テイラーも、このライヴ版ではキースのギターに遠慮なく絡む。バンド全体で醸し出すグルーヴの風格は、さすが最強ライヴ・バンド。
08LITTLE QUEENIE
『ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト!』で公式初登場となったチャック・ベリーのカヴァー。キースのギターがブルージーに炸裂するミディアム・ナンバーで、ミックの歌唱、イアン・スチュワートのピアノもノリまくり。
09HONKY TONK WOMEN
演奏そのものの面白みには欠けるが、逆にスゴみは体感できるのがこのライヴ・ヴァージョン。スタジオ・ヴァージョンをほぼ正確になぞりながらも、しっかりとライヴ独自の空気に塗り替えてみせるバンドの力量が圧巻。
10STREET FIGHTING MAN
ほぼ原曲どおりに演奏されているライヴ版ではあるが、スタジオ版で聴けたシタール(ブライアン・ジョーンズ演奏)は不在。怒涛のグルーヴを武器にたたみかける攻撃的な演奏は、黄金期ストーンズ前夜の晴れ姿。