ミニ・レビュー
ストーンズのSACDねえ……と当初は懐疑的だったが、なるほど“なまなましさ”がキモだった60年代中頃までのレコーディングには、思いのほか有効かも。黒人音楽の模倣からの脱却を目指して苦闘中だった時期ならではの、熱っぽい空気が伝わってくるよう。
ガイドコメント
米国での4枚目、1965年発表作品。イアン・スチュアートはじめ、ジャック・ニッチェらが参加し、初の全米1位を記録した作品。あの名曲「サティスファクション」収録。
収録曲
01MERCY, MERCY
ドン・コヴェイのヒット曲をカヴァー。若きミックの歌声は本家の黒人シンガーにも負けないほどブラックだが、ブライアンの裏声コーラスがその黒っぽさをより強調している。粘り腰のリズム・セクションも含めて、本格的なR&Bサウンドが堪能できる1曲。
02HITCH HIKE
マーヴィン・ゲイのヒット曲の装飾を剥ぎ取り、原曲の骨格だけを残して、よりR&B調のシンプルなサウンドでカヴァー。リフレインの多い単純な曲だが、ミックのヴォーカルにはリフレインでさえも楽しみにさせてしまう不思議な魅力がすでにある。
03THE LAST TIME
ステイプル・シンガーズの「This May Be the Last Time」を下敷きにしたというジャガー=リチャードのオリジナル曲。それまでのレパートリーの中でも最もポップな曲で、最初からシングルでの発売を目標に録音された。全英チャートで3週連続1位を記録。
04THAT'S HOW STRONG MY LOVE IS
O.V.ライトやオーティス・レディングが歌ったサザン・ソウルの当時最新の名曲をカヴァー。イアン・スチュワートのオルガンを含むストーンズの強力なR&Bサウンドをバックに、乗りに乗っている若きミックのソウルフルなヴォーカルがたっぷりと堪能できる。
05GOOD TIMES
サム・クックのヒット曲をカヴァー。原曲もポップなR&Bだが、ストーンズのヴァージョンはよりポップ。軽快なビートに乗って陽気に歌われるこの曲は、初期ストーンズによるカヴァー・ヴァージョンとしては最もR&B色が稀薄なもののひとつだ。
06I'M ALRIGHT
1965年3月の英国ツアーで収録されたライヴ音源。ライヴ・バンドとしてのストーンズの魅力を伝えている。ここでのミックは何故か“I'm alright”ではなく“It's alright”と歌っている。オリジネイターはボ・ディドリーだが、ギター・リフ以外はあまり似ていない。
07(I CAN'T GET NO) SATISFACTION
ストーンズの名を世界中に知らしめたジャガ=リチャードの強力なオリジナル曲。キャッチーなギター・リフを繰り返すシンプルな曲だが、「満足できない」という歌詞の内容が多くの若者たちに熱狂的に支持されて、米英ともにNo.1ヒットを記録した。
08CRY TO ME
ミックのソウルフルなヴォーカルをフィーチャーしたバラード。ソロモン・バークのヴァージョンが有名だが、ストーンズはベティ・ハリスのスロー・ヴァージョンを参考にしたようだ。初期のストーンズ・ファンの間では人気の高い曲のひとつだった。
09THE UNDER ASSISTANT WEST COAST PROMOTION MAN
ナンカー・フェルジ名義になっているが、原曲はバスター・ブラウンの「Fannie Mae」。最初の米国ツアーでの宣伝担当者をモデルにした歌だと言われている。ブライアンのマウスハープをフィーチャーしたシャッフル・ビートのブルース・ナンバー。
10PLAY WITH FIRE
ナンカー・フェルジ名義のオリジナル曲。ミック、キース、フィル・スペクター(生ギター)、ジャック・ニッチェ(ハープシコード)によって演奏されたアコースティック・ヴァージョン。同曲のロック・バンド・ヴァージョンも存在していると言われていたが、未発表。
11THE SPIDER AND THE FLY
ナンカー・フェルジ名義の最後の1曲。テンポを落としたシャッフル・ビートのブルース。男と女をクモとハエにたとえた歌詞をミックがダルそうに歌う。95年3月の来日時に東京のスタジオで録音したニュー・ヴァージョンがアルバム『STRIPPED』に収録された。
12ONE MORE TRY
ジャガー=リチャーズのオリジナル曲。珍しくポジティヴな歌詞で、曲調もアップテンポのR&B。ブライアンのマウスハープとイアン・スチュワートのピアノが好演。快調な演奏に乗って、ミックも「もう一度、努力しろ」などと陽気に歌っている。