ミニ・レビュー
いわずと知れた68年発、アーシー名作。ブライアンがいた最後の作品でもある。で、例のSACD対応フォーマットによる再発売盤。ジャケは紙で三面。打楽器がポコポコなり、声やギターが飛ぶサイケ・アフロ調(1)をはじめ新奇な聴こえ具合、確かにある。
ガイドコメント
前作はなかったことのように、ブルース・ロック、ルーツ、アコースティック回帰の大名盤。米国での12枚目、1968年12月リリース。時代風景のアオリを受けた「ストリート・ファイティング・マン」ほか。
収録曲
01SYMPATHY FOR THE DEVIL
数種類の打楽器を使ったアフロ調のリズムが独特の世界を構築。ミックのヴォーカルも圧巻だが、キースのギター・ソロも秀逸。キリスト、ロシア革命、ケネディ暗殺などを織り込んだ歌詞もロック史上に残る傑作。制作の過程を描いたゴダール監督の映画も必見。
02NO EXPECTATIONS
ブライアンのスライド・ギターが美しいカントリー調のバラード。噛みしめるように「ここにはもう二度と来ない」と歌うミックのヴォーカルも良い。キースの12弦ギターとビルのベースも好演。あまり目立たないが、ピアノも効果的に使われている。
03DEAR DOCTOR
カントリー・ブルース調のワルツ。生ギター、マウスハープ、ベース、タンバリンによるアコースティックな演奏に乗って、ミックのヴォーカルが「ドクター、助けてくれ」などと哀願する。女性からの手紙の文面を歌うパートで急に裏声になるギミックも楽しい。
04PARACHUTE WOMAN
ヘヴィなブルース・ロック・チューン。アコースティックなサウンドが基調だが、汽笛みたいなマウスハープと不気味なファズ・ギターをフィーチャーした演奏は黒く重い。ストレートな性的表現を満載した歌詞を淡々と歌うミックのヴォーカルも歌唱賞モノ。
05JIGSAW PUZZLE
ブライアンのスライド・ギターが堪能できる曲。生ギターのストロークを基調にしたフォーク・ブルース調のシンプルなサウンドだが、同じことを繰り返しながら徐々に盛り上げていく展開はストーンズならでは。イアン・スチュワートのピアノも好サポート。
06STREET FIGHTING MAN
60年代後半のキナ臭い空気を象徴する名曲。ドラムスとマラカスが刻むリズムに、ブライアンのシタールやタブラ、キースとデイヴ・メイスンのギターなどが絡むサウンドがとても新鮮に響く。ミックのヴォーカルも雄々しいし、隠し味のピアノも効いている。
07PRODIGAL SON
ロバート・ウィルキンスのブルース・クラシックのカヴァー。生ギター主体のシンプルな編曲で、ミックのヴォーカルも含めて、オリジナルのスタイルをほぼ忠実に踏襲。演奏の背後で小さく鳴っているマウスハープとチャーリーのバスドラが効いている。
08STRAY CAT BLUES
15歳のセクシーな迷い猫の生態を描いた曲。エレクトリック・ギターのヘヴィなリフが先導するブルース・ロック・サウンドは、悪名高き「悪魔を憐れむ歌」以上に退廃的な雰囲気を濃厚に漂わせている。キースのリード・ギターの鋭角的な音色も禍々しい。
09FACTORY GIRL
フィドルやマンドリンをフィーチャーしたストーンズ流カントリー・ブルース。米国内で西部とか南部とかいうよりもむしろアイリッシュまで先祖返りしているアコースティックなサウンドをバックに「俺は女工を待ってんだよ」などとミックが敢えて下品に歌ってみせる。
10SALT OF THE EARTH
聖書の一節から生まれた名曲。労働者や下層階級を称えるストーンズ流の人間讃歌。キースが歌うヴァースから始まり、ミックにバトンタッチして、二人のデュエットになり、やがて女性コーラスを加えた大合唱へと到るドラマティックな展開はまさに感動的。