ミニ・レビュー
65年12月にリリースされたアメリカでの6枚目のアルバムのDSDマスタリング盤。(1)はほとんどパンク・ロックだが、後半にはまったりしたオリジナル曲を中心に固めた構成で、全体的には渋い雰囲気がたまらないのです。デジパック見開きジャケット。
ガイドコメント
1965年12月リリースの米国での5枚目。「一人ぼっちの世界」が全米1位を記録、アルバムも4位にチャート・イン。R&B色の後退とより広い音楽性が聴けるのも特徴。
収録曲
01SHE SAID YEAH
ラリー・ウィリアムスのロックンロールをよりテンポ・アップしてカヴァー。勢いのある演奏でミックのヴォーカルも乗りに乗っているし、キースとビルのコーラスも楽しい。オリジナルのサックスのパートで登場するシャープなギター・ソロが秀逸。
02TALKIN' ABOUT YOU
チャック・ベリーのロックンロールを大胆にテンポ・ダウンさせたカヴァー。ブルース調のアレンジで、ミックが絞り出すようなヴォーカルを聴かせてくれる。コーラス、ギター、ピアノなど、サウンドの細部の工夫にもバンドの成長の跡が見られる。
03YOU BETTER MOVE ON
アーサー・アレクサンダーのオリジナルをカヴァー。ラテン調のリズムとエキゾチックなサウンドをバックに、ミックがやさしく呟くように歌う。大胆に加工されたコーラスが新しい。エリック・イーストンによるプロデュースはややフィル・スペクター風か。
04LOOK WHAT YOU'VE DONE
マディ・ウォーターズのブルース曲をカヴァー。ミディアム・テンポのシャッフルで、演奏をじっくりと聴かせるタイプの曲。ブライアンのマウスハープをほぼ全面的にフィーチャー。間奏でもブライアンはエモーショナルなソロを披露している。
05THE SINGER NOT THE SONG
ジャガー=リチャーズのオリジナル曲。ミディアム・スロー・テンポのフォーク調のバラードで、「唄よりも歌手だよ」などとミックが歌う。間奏の生ギターのソロも印象的。珍しくR&Bやブルースの要素は稀薄だが、その代わりビートルズの影響が感じられる。
06ROUTE 66
ボビー・トゥループのジャズ・ナンバー。ストーンズはチャック・ベリーのヴァージョンを参考にしたが、ピアノが目立つベリー版とは異なり、エレキ・ギターを全面的にフィーチャーしている。ミックのヴォーカルは比較的淡白だが、独特の色気はすでにある。
07GET OFF MY CLOUD
ジャガー=リチャーズのオリジナル曲。勢いを感じさせるR&B調のサウンドに乗って、ミックが「出て行け。俺に構うな」とパワフルに歌う。「サティスファクション」よりもポップな印象がある。1965年にシングルとしてリリースされ、米英ともに1位を獲得した。
08I'M FREE
ジャガー=リチャーズのオリジナル曲。自由を求める若者たちの代表だった当時のストーンズにふさわしい「俺はやりたいことをやっている」という歌詞をミックが誇らしげに歌う。ビートルズの「エイト・デイズ・ア・ウィーク」によく似た箇所があることでも有名。
09AS TEARS GO BY
ジャガー=リチャーズ+アンドリュー・L・オールダムがマリアンヌ・フェイスフルのために書いたバラードの名曲。キースの生ギターと弦楽四重奏をバックに、少し気どったミックが囁くように歌う。ストーンズの未来の可能性を広げた1曲でもあった。
10GOTTA GET AWAY
ジャガー=リチャーズのオリジナル曲。男が女に別れを告げる唄。ゆったりとしたミディアムのビートに乗って、ミックのヴォーカルが自由に歌いまくる、という曲調が新鮮。ミックが徐々にバンドの中心になりつつあった事実を象徴するような1曲。
11BLUE TURNS TO GREY
ジャガー=リチャーズがマイティ・アヴェンジャーズに提供した曲のセルフ・カヴァー。コーラスを使ったフォーク調のバラードで、ストーンズ的というよりもむしろビートルズ的。クリフ・リチャードによるカヴァー・ヴァージョンが英国でヒットしている。
12I'M MOVING ON
ハンク・スノウのC&Wの名曲をレイ・チャールズのヴァージョンを参考にカヴァー。1965年の英国ツアーで収録されたライヴ音源。パワフルにドライブするロックンロール・ヴァージョンで、ブライアンのスライド・ギターとミックのマウスハープが効いている。