ガイドコメント
彼らのアルバム未収録曲及び「抱きしめたい」や「シー・ラヴズ・ユー」のドイツ語ヴァージョンといった別ヴァージョンを収録したありがたい編集盤。1,2ともに88年の発表。
収録曲
01DAY TRIPPER
1965年両A面シングルの一曲として発表。のちのロック・ギター奏法の中心となる、ギターの低音部を使ったフレーズの繰り返しを軸に、リズミカルに歌われるR&B風ナンバー。ビートルズらしい清涼なコーラスも魅力。
02WE CAN WORK IT OUT
1965年両A面シングルの一曲として発表。アコースティック・ギターとオルガンなどによるサウンド、“人生は短く、時間はない”といった少しビターな印象を残す歌詞、3拍子を加えた凝ったアレンジなど、ボクや彼女といったアイドル的な曲想からの脱皮も感じられる。
03PAPERBACK WRITER
「レイン」とのカップリングで1966年6月に発表されたシングル曲。ポール・マッカートニー主導で作られ、リード・ヴォーカルを担当、ベース・ラインがドライブするアップテンポなナンバー。ペイパーバックとは紙の表紙による本。
04RAIN
テープ速度の操作、テープの逆回転、ヴォーカルのピッチ操作など、最新のスタジオ技術を駆使して作り上げたジョン主導のサイケデリック・ソング。逆回転ギターや逆回転ヴォーカルも聴ける。シングル「ペイパーバック・ライター」のB面に収録。
05LADY MADONNA
1968年発表のシングル。ジャズ・ピアニストだった父をもつポールがピアノで作曲した、スウィンギーかつブルージィなナンバーで、サックスのほか、紙を震わせて表現したスキャットなどを加えたアレンジも印象的。
06THE INNER LIGHT
映画『ワンダーウォール』のサントラと同じセッションで録音されたトラックに、ヴォーカルやコーラスをダビングしたジョージ流ラーガ・ロック。老子によるタオの教えを引用した歌詞も話題になった。シングル「レディ・マドンナ」のB面に収録。
07HEY JUDE
ジョン・レノンの息子ジュリアンに“ヘイ、ジュード…”と語りかけ、元気づけようとポールが歌う名曲。歌のあと、繰り返されるリフレインがゴスペル的な雰囲気があり、ポールのヴォーカルもブラック・ミュージック流儀。
08REVOLUTION
1968年8月「ヘイ・ジュード」とのカップリングで発表。冒頭から歪んだギターで迫るロック・ナンバーで、当時の社会風潮を少しクールに揶揄した歌詞、ジョン・レノンの「All right!」という叫びなどが印象的。
09GET BACK
アップル・スタジオでの録音を生かしたシングル・ヴァージョン。レイドバックの時代を先取りしたかのような、スワンプ風味のアーシーなロックンロール。ジョンのギター・ソロとビリー・プレストンのエレクトリック・ピアノのソロが聴ける。
10DON'T LET ME DOWN
1969年4月「ゲット・バック」のカップリングで発表。ジョン・レノンのリードによる曲で、女性へのストレートかつピュアな愛情を感じさせるロック・ナンバー。叫ぶように愛を歌うジョンの真骨頂を感じさせる名曲。
11THE BALLAD OF JOHN AND YOKO
1969年5月発表のシングル曲。ジョン・レノンがヨーコとの結婚のための旅行での顛末などをつづり、50's風アレンジで聴かせる。レコーディングはジョンとポール・マッカートニーの二人のみで行なわれている。
12OLD BROWN SHOE
ジョージがピアノで作ったラブ・ソング。リンゴのドラムスが性急なビートを叩き出し、ポールのベースが唸りを上げ、ピアノやオルガンがけたたましく鳴り響く。ジョージのギター・ソロも激しく自己主張。シングル「ジョンとヨーコのバラード」のB面に収録。
13ACROSS THE UNIVERSE
ジョンの傑作。視覚的イメージを想起させる歌詞が素晴らしい。ジョージのシタールが幻想的な雰囲気を演出している。これはピッチを上げて鳥の鳴き声や羽ばたきのSEを加えた通称バード・ヴァージョン。WWFのチャリティ・アルバムに収録された。
14LET IT BE
作者ポールの意図に近いはずのシングル・ヴァージョン。アルバム版と同じテイクだが、過剰な加工を施された前者とは異なり、スタジオ・ライヴ形式での録音を生かした素直なミックスになっている。こちらのほうがビートルズらしいことはたしか。
15YOU KNOW MY NAME (LOOK UP THE NUMBER)
ジョンとポールが作り上げた最も風変わりなビートルズ・ナンバー。彼らは多様なアイデアをこの曲に詰め込み、馬鹿げた冗談や声帯模写などを実に楽しそうに披露している。ビートルズならではのユーモアのセンスを存分に発揮した最後のシングルB面曲。