ミニ・レビュー
ファン待望のCD化第一弾。'63年に発売されたセカンド・アルバムで、それまでチャートの1位だったデビュー作にかわってナンバー1を獲得。ジョージ初のオリジナル曲の他、メロディアスなベースで聴かせるイキのいいロックンロールは今聴いてもサスガ。
ガイドコメント
多くのバンドが真似た秀逸なジャケット・デザインの2ndアルバム。「オール・マイ・ラヴィング」でのギター・プレイをはじめ、早くも斬新な音作りが見られる。1963年11月発表、21週連続全英1位を記録。
収録曲
01IT WON'T BE LONG
「シー・ラヴズ・ユー」の姉妹作ともいえるジョン主導のオリジナル曲。同様に「yeah」というコーラスを主軸に盛り上げる曲で、メロディのフックも強力。シングルとしては前者に軍配が上がったものの、この曲を愛するファンも多い。
02ALL I'VE GOT TO DO
アーサー・アレキサンダーやスモーキー・ロビンソンの影響を感じさせるオリジナル曲。単純なコード進行だが、メロディは意外にカラフルで、何よりもジョンの歌声が魅力的。フェイドアウト前にはジョンのハミングも聴ける。
03ALL MY LOVING
ビートルズ屈指のメロディアスかつキャッチーな名曲で1963年に録音。インパクトのある出だしのヴォーカルからのイントロ、跳ねるようなベース・ライン、三連のリズムを刻むギターなど聴きどころ多数。
04DON'T BOTHER ME
初めて録音されたジョージのオリジナル曲。感情的になりがちな失恋の歌でもジョージが歌うと淡白に乾いている。感情表現は苦手だけれど、それが彼の歌声の魅力でもある。つまずきそうなギター・ソロとドライなパーカッションも印象的。
05LITTLE CHILD
ジョンとポールがリンゴのために書いたスキッフル感覚のロックンロールだが、ここでは何故かジョンがリード・ヴォーカルを担当。ジョンのハーモニカもフィーチャーされ、レコーディングでは初めてポールがピアノを弾いている。
06TILL THERE WAS YOU
1957年のミュージカル『The Music Man』からの曲。ポールがお気に入りのペギー・リー・ヴァージョンをカヴァー。ラテン調の編曲で、メキシカン風味のギター・ソロも特徴的。後年のポールの名曲「アンド・アイ・ラヴ・ハー」を連想させる。
07PLEASE MISTER POSTMAN
マーヴェレッツの1961年の全米No.1ヒット。ジョンのヴォーカルとポール&ジョージのコーラスが生み出す躍動感はオリジナルを超えている。英米ではシングルにもなっていないが、世界で最も有名なヴァージョンであることは間違いない。
08ROLL OVER BEETHOVEN
チャック・ベリーが56年に発表した曲。初期にはジョンの持ち歌だったが、この録音ではジョージがヴォーカルを受け持ち、本家に負けないギター・ソロも披露。ライヴで鍛えられているせいか、ここでのジョージは頼もしい。
09HOLD ME TIGHT
リトル・リチャードのスタイルを踏襲しながらも斬新なコード進行で個性を主張する、ポール主導のロックンロール。やや無謀なメロディ展開などが目立つものの、それでも力業で押し切ってしまう豪腕ぶりは初期ビートルズならでは。
10YOU REALLY GOT A HOLD ON ME
スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズが1962年に発表したヒット曲。ジョンとジョージという珍しい組み合わせのツイン・ヴォーカルが聴ける。二人のハーモニーは荒削りだが、ジョンのシャクり上げるような節回しには抗い難い魅力がある。
11I WANNA BE YOUR MAN
ジョンとポールがローリング・ストーンズに提供した曲。ビートルズではリンゴがヴォーカルを受け持ち、ライヴでの彼の十八番となった。ストーンズのR&Bヴァージョンも素敵だが、リンゴが歌えば見事に「リンゴのための曲」になる。
12DEVIL IN HER HEART
ドネイズというガール・グループが1962年に発表した曲。「彼女の心には悪魔が住んでいる」と忠告するジョンとポールの意地悪なコーラスに抗うように「違うよ、彼女は僕の天使」と歌う気弱なジョージ、というビートルズ的な構図が楽しい。
13NOT A SECOND TIME
スモーキー・ロビンソンの影響を感じさせるジョン主導の曲。英国の評論家にマーラーの『大地の歌』と比較されたエピソードでも知られている。それほど斬新な印象はないが、当時のギター・バンドのコード進行としては新鮮だったのかも。
14MONEY
バレット・ストロングの1959年のヒット曲をカヴァー。即興で付け加えられた「自由になりたい」という衝撃的なシャウトを含むジョンの熱唱は、オリジナルを凌駕している。黒く重い演奏の中でクールに響くジョージ・マーティンのピアノも効果的。