ミニ・レビュー
改めて何度も聴いてしまった。CDでなおさらジョンのサイド・ギターの切れが心に染みる。64年秋に録音された4作目のアルバム、カヴァー6曲オリジナル8曲、などと書いている自分がむなしくなってくる程わかりやすく、コケティッシュで愛らしく美しい一枚。
ガイドコメント
ジャケット写真も美しい4th。14曲中6曲がバディ・ホリー、チャック・ベリー、カール・パーキンスらのカヴァー曲だ。新曲は少ないものの、彼らのルーツが分かる趣き深い作品でもある。1964年12月発表、9週連続全英1位を記録。
収録曲
01NO REPLY
ジョンがいきなり歌い出す冒頭からファンのハートを鷲掴みにする曲。アーシーなアコースティック・サウンドをバックに、失恋した男の心情が物語風に描かれる。シンガー/ソングライターとしてのジョンの成長を象徴する名曲。
02I'M A LOSER
ロカビリー調のビートに乗って、ジョンが「俺は負け犬」と歌い、フォーキーなハーモニカ・ソロも披露する。のちに本人も認めているようにボブ・ディランの影響が色濃く、ジョンが初めて自分自身について書いた曲でもある。
03BABY'S IN BLACK
ツアー中のホテルで書かれたジョンとポールの共作曲。二人がヴォーカルをシェアしている。冒頭のハーモニーやワルツのリズムはいかにもフォーク・バラード調だが、ポールが歌うサビでのモダンな展開はビートルズならでは。
04ROCK AND ROLL MUSIC
チャック・ベリーのロックンロール・クラシックをカヴァー。オリジナルのような深みには欠けるものの、ひたすら直線的に突っ走るジョンのパワフルなヴォーカルはまさにロック史上に残る名演。ジョージ・マーティンのピアノも鮮やかだ。
05I'LL FOLLOW THE SUN
ポールが16歳の頃に書いた曲。素朴なメロディとナイーブな歌詞が美しい。ポールの瑞々しい歌声も素敵だが、まるで双子のようなジョンのハーモニーも光る。少年時代のジョンとポールの姿を想像させるチャーミングな小品だ。
06MR. MOONLIGHT
ドクター・フィールグッド&インターンズの1962年のヒット曲をカヴァー。ビートルズのオリジナルだと勘違いしている人も少なくない。ラテン風味のメロディとリズムが魅力だが、何よりも冒頭のジョンのシャウトが最高にイカしてる。
07MEDLEY;A)KANSAS CITY|B)HEY, HEY, HEY, HEY
リーバー=ストーラーの「KC・ラヴィング」とリトル・リチャードの「ヘイ・ヘイ・ヘイ・ヘイ」をメドレーでカヴァー。ポールのアグレッシヴなヴォーカルが素晴らしい。ライヴそのままのアレンジで再演してみせた初期ビートルズらしい一発録りの名演。
08EIGHT DAYS A WEEK
1964年発表。軽やかなシャッフルの跳ねたリズムに、“1週間に8日も愛してるんだ”“僕が言いたいのは、君をいつでも愛してるってこと”といったお茶目な表現で歌われる、ハッピーなラヴ・ソング。
09WORDS OF LOVE
バディ・ホリーが1957年に発表した曲をカヴァー。初期のライヴではジョンとジョージがハーモニー・パートを歌っていたが、この録音ではジョンとポール。ジョージのギター・ソロも含めて、オリジナルをほぼ忠実に再現している。
10HONEY DON'T
カール・パーキンズの曲を訪英中の本人の眼の前でカヴァー。ライヴではジョンも歌っていたが、ここではリンゴのヴォーカルでオリジナルをほぼ忠実に再現している。師匠のプレイを彷彿とさせるジョージのロカビリー・ギターが圧巻。
11EVERY LITTLE THING
ビートルズ版“シリー・ラブ・ソング”。生ギターを使ったアコースティックなサウンドだが、ジョージのリード・ギターとリンゴのティンパニが効いている。地味な小品だが、のちにイエスによってカヴァーされ、日本の某バンドにも名前を与えた。
12I DON'T WANT TO SPOIL THE PARTY
ジョン主導のオリジナル曲。当初はリンゴのために書いたカントリー調の曲だが、ここではジョンが歌っている。ジョンはダブル・トラック録音でみずからハーモニーも担当。ジョージのギター・ソロが快調に疾走している。
13WHAT YOU'RE DOING
キャッチーなギター・リフを基にしたポールの曲。シンプルな曲だが、12弦ギターとティンパニが効果的にフィーチャーされ、ディテールは意外に凝っている。ビートルズよりもむしろピーター&ゴードンに似合いそうな気もするが。
14EVERYBODY'S TRYING TO BE MY BABY
敬愛するカール・パーキンスの曲でジョージがヴォーカルを受け持ち、師匠譲りのギャロッピング奏法を駆使したギター・ソロも披露。ロカビリー/カントリー色の濃い『ビートルズ・フォー・セール』のラストを飾るにふさわしい名演だ。