ミニ・レビュー
出たっ!これぞビートルズ処女アルバムのCD化。しかし、既に15年も経ったなんて誰が信じられますか。これをレトロと言うなかれ。現代のバッハと形容されて久しいビートルズの音楽に対する貪欲さ、好奇心を今こそ大いに同時体験して欲しいのです。
ガイドコメント
彼らの記念すべきデビュー盤。既発シングル曲を除く10曲は、たった16時間で録音してしまったという。1曲目のポールのロックンローラーぶりがかっこいい。1963年3月発表、29週連続全英1位記録作品。
収録曲
01I SAW HER STANDING THERE
チャック・ベリーのスタイルを踏襲したポール主導のオリジナル曲。17歳の彼女と踊ることが人生で最も大切な問題だと感じる思春期の感情を鮮やかに表現している。ロックンロールをプレイする楽しさに満ち溢れた若々しい演奏が素晴らしい。
02MISERY
ヘレン・シャピロのために書いた曲。失恋した男の落胆ぶりを描いたポップ・ソングだが、この手の曲を戯画化しているかのように聴こえるのは皮肉屋の道化師ジョンが歌っているから。感傷的な歌詞を裏切る陽気な演奏が楽しい。
03ANNA (GO TO HIM)
黒人R&B歌手アーサー・アレキサンダーの1962年の小ヒット曲をカヴァー。去っていこうとする恋人に訴えるラブ・ソングだが、利己的な素振りが魅力的だった若きジョンの歌声は、小気味よいほどクールに相手を突き放している。
04CHAINS
クッキーズの62年のヒット曲をジョージのヴォーカルでカヴァー。やや被虐的な歌詞が特徴だが、ジョージのぎこちない歌声にはそれもよく似合う。初期ビートルズの代名詞ともいえる3声のコーラスが効果的に使われている。
05BOYS
シュレルズのB面曲をリンゴのヴォーカルでカヴァー。前任ドラマー、ピート・ベストの持ち歌を引き継いだものだが、初期のライヴでは定番曲のひとつとなった。のちに役者としても活躍するリンゴの素朴な個性が光る。
06ASK ME WHY
スモーキー・ロビンソン&ミラクルズの影響を感じさせる初期のオリジナル曲。ラテン調のリズムをベースにしたジョン主導のポップ・ソングで、エキゾチックなメロディが新鮮に響く。シングル「プリーズ・プリーズ・ミー」のB面に収録。
07PLEASE PLEASE ME
1963年発表、ビートルズが全英チャート初の1位を飾った2ndシングル。“カモン、カモン…”というコール・アンド・レスポンス、2とおりの意味をもつ“Please”をひっかけた洒落たセンスなどに注目。
08LOVE ME DO
09P.S. I LOVE YOU
ポールが手紙をテーマにして書いた初期のラブ・バラード。抑制されたカリプソ風味がポールらしい。ジョージ・マーティンの判断で、アンディ・ホワイトがドラムスを叩き、リンゴはマラカスを担当している。シングル「ラヴ・ミー・ドゥ」のB面に収録。
10BABY IT'S YOU
シュレルズの1961年のヒット曲のカヴァーだが、若きジョンのハスキーなヴォーカルの存在感やビートルズならではのコーラスの効果は、オリジナル・ヴァージョン以上に独創的。ジョージ・マーティンが弾くチェレスタの音色も耳に残る。
11DO YOU WANT TO KNOW A SECRET
幼い頃に聴いたディズニー映画の主題歌をイメージしてジョンが書いた曲。起伏の少ないメロディが若きジョージの素っ気ない歌声にはよく似合う。ビリー・J.クレイマー&ダコタスによるヴァージョンは英チャートでNo.1を獲得。
12A TASTE OF HONEY
同名ミュージカルのテーマ曲だが、ビートルズはレニー・ウェルチのヴァージョンをカヴァー。ロックンロール以外の音楽にも興味を抱いていたポールらしい選曲だ。ポールのヴォーカルはビートルズ初のダブル・トラック録音によるもの。
13THERE'S A PLACE
ジョンがモータウン・サウンドを意識して書いた曲。リード・ヴォーカルもジョン。ポールとのハーモニー・パートではどちらが主旋律なのかわかり難いが、それが魅力にもなっている。内省的な歌詞はジョンの未来を予感させる。
14TWIST AND SHOUT
アイズレー・ブラザーズの1962年のヒット曲をカヴァー。キャヴァーン・クラブでのライヴの熱狂をそのままスタジオに持ち込んだような、ジョンの猛々しいヴォーカルが圧巻。個性あふれる3声のヴォーカル・ハーモニーが効果的に使われている。