ミニ・レビュー
同名映画のサントラ盤としても知られ、'70年春には8年間全米NO.1を記録した。一時期のスタジオ技術を駆使したものから、デビュー当初のシンプルなビートを狙ったつくりへと路線変更。もっとも、4人の呼吸は一致せず、ポールのソロへの布石ともとれる内容。
ガイドコメント
1969年8月にリリースするはずだった幻のアルバム『ゲット・バック』に大幅な変更を加えたのが本盤。フィル・スペクターがミックスを担当。1970年5月発表。
収録曲
01TWO OF US
エヴァリー・ブラザーズを思わせるポールのフォーキーな曲。リンダとの生活を描いた歌詞だが、ポールがジョンに“昔に戻ろう”と呼びかけている、という解釈も可能。ジョージはギターの低音弦でベースのパートを弾いている。最後の口笛はジョン。
02DIG A PONY
ジョンが書いたヨーコ讃歌のワルツ。ジョンらしい言葉遊びの歌詞とアーシーなバンド・サウンドが楽しめる。ユニゾンのギター・リフも印象的。アップル・ビル屋上で演奏したヴァージョンだが、ライヴならではの一体感もあり、よくまとまっている。
03ACROSS THE UNIVERSE
04I ME MINE
作者ジョージによれば「エゴの問題」を扱った「ヘヴィなワルツ」。土臭いサウンドが当時の空気を象徴している。ワルツ・パートでの哀愁のメロディが唐突にシャッフルのブギへと展開する構成もユニーク。フィル・スペクターによる大胆な加工と編集も聴きもの。
05DIG IT
12分25秒も続くジャム・セッションをフェイド・インとフェイド・アウトで50秒に編集。ここでのジョンは6弦ベースを弾きながら即興で歌っている。ポールはピアノを担当し、ヴォーカルも披露したが、ここでは未収録。ビリー・プレストンがオルガンで参加。
06LET IT BE
07MAGGIE MAE
リヴァプールに伝わるトラディショナル・ソング。クォリーメン時代のレパートリーだったこの売春婦の歌を、ジョンとポールはあえてリヴァプール訛りで下品に歌っている。50年代後半のクオリーメンのライヴを想像しながら聴くと楽しい。
08I'VE GOT A FEELING
ジョンとポールがそれぞれに作ったパートを合体させた共作曲。ポールの「俺」パートからジョンの「皆」パートへと移行し、最後は二人がそれぞれのパートを同時に歌う、という展開はさすが。アップル・ビル屋上での力強いバンド・サウンドが堪能できる。
09ONE AFTER 909
ジョンが17歳の時に書いた曲。シンプルなロックンロールだが、ジョンとポールが歌えばビートルズ・ナンバーへと鮮やかに変貌。アップル・ビル屋上でのライヴ録音だからこその躍動感もある。ビリー・プレストンがエレクトリック・ピアノで参加。
10THE LONG AND WINDING ROAD
『レット・イット・ビー』などに収録、シングルとしても発表されたナンバー。品格とスケールにあふれるバラードで、思いにふけりながら、救いを求める歌詞とあいまって、ビートルズの終焉を飾る名曲としても知られる。
11FOR YOU BLUE
ジョージがパティに向けて書いたブルージィなラブ・ソング。呟くような歌い方がよく似合う。ジョンがエルモア・ジェイムズばりのスライド・ギターを披露。ジョージの生ギターとポールのピアノもセンスがいい。地味ながら魅力的な名演。
12GET BACK