ミニ・レビュー
同名のサウンドトラック((1)〜(6))に'67年のシングル曲((7)〜(11))を加えたアメリカ編集アルバムのCD化。(4)や(6)でのエレクトロニクス導入の試みなど、聴きどころは多い。ただ(6)から(7)へと移るところは違和感が残る。LPならAB面に分れているのだが。
ガイドコメント
驚異的な視聴率75%を記録したTV映画のサントラ盤。本盤はその米キャピトル編集ヴァージョン。オリジナル英盤は、7インチEP2枚組仕様での発売だった。1967年12月発表。
収録曲
01MAGICAL MYSTERY TOUR
1967年発表。ビートルズ自らが製作したTV用同名映画の主題歌。これから始まる不思議な旅、という期待感をあおっていく見事な構成、最後にストレンジなピアノなどの音でフェイド・アウトしてゆく……といった圧倒的な出来栄え。
02THE FOOL ON THE HILL
発表されたと同時にスタンダードになったポールの名曲。芳醇なメロディはまさに天才の仕事。ピアノの弾き語りが基調だが、ポールのリコーダー、ジョンとジョージのハーモニカ、3本のフルートを含むトラッド・フォーク調の編曲が泣かせる。
03FLYING
映画のために作られたサイケデリックなインストゥルメンタル曲。ポール主導だが、クレジットは4人の共作。ユルいリズム・トラックに乗って、メロトロンと男声コーラスがメロディを奏でる。約10分間のトラックを2分強に編集したEPヴァージョン。
04BLUE JAY WAY
ロサンジェルスのブルージェイ通りの借家で友人を待っている間にジョージが書いた曲。半音だらけの不気味なメロディだが、これこそがジョージの魅力。キーボードで作曲したせいか、ギターレスの編成で、ジョージはオルガンを演奏している。
05YOUR MOTHER SHOULD KNOW
ポールらしいボードヴィル調のポップ・ソング。シャッフル・ビートに哀愁のメロディ、というのも彼の定番のひとつ。ピアノとオルガンを中心に、中性的なコーラスを配した編曲もシンプルだがチャーミング。左右へと居場所を変えるポールの歌声も素敵だ。
06I AM THE WALRUS
ルイス・キャロルの影響を感じさせるジョンの曲。ナンセンスな言葉遊びの歌詞をラップばりに吐き出していくジョン特有のリズムがこの驚くべき曲を生んだ。無数の音を詰め込んだ音楽的実験の集大成のようなサウンドはまさにサイケデリック。
07HELLO GOODBYE
1967年11月発表のシングル曲。Cをキーに“ドレミファソラシド”の音階をそのまま巧みに使い、“ハロー”と“グッドバイ”というすれ違いをシンプルな歌詞にのせた、ポールのリードによるナンバー。
08STRAWBERRY FIELDS FOREVER
1967年2月発表。ジョン・レノンが育った家の近くにあった救世軍の施設を取り上げたナンバー。レコーディングを重ね、さまざまな技術を駆使した不思議なサウンドはサイケデリックの先駆けともなったことで知られる。
09PENNY LANE
1967年発表。彼らの出身地リバプールに実在する通りにちなんだナンバー。英国風のメロディに高音〜低音を縫うように動くベース・ライン、間奏のファンファーレのような高いピッコロ・トランペットの音が印象的。
10BABY YOU'RE A RICH MAN
ジョンとポールの曲を合体させた共作曲。それぞれが自分のパートを歌っているが、ポップ・スターを揶揄した歌詞はジョンらしいし、成金趣味を笑う歌詞はポールらしい。ジョンが弾くクラヴィオラインがサイケデリックな雰囲気をより強調している。
11ALL YOU NEED IS LOVE
フランス国歌のメロディをイントロに取り入れるなど、遊びゴコロたっぷりの、ピースフルなメッセージによるナンバー。1968年当時、衛星中継で全世界に向けて発信されたエピソードや、ミック・ジャガーほか豪華ゲストも参加したことで名高い。