ミニ・レビュー
US盤とはジャケットも収録曲も違う66年発表の不朽の名作。しかし“俺の可愛いあいつとヤりたい”だけで11分以上ってのはやっぱりすごい話だ(笑)。かつてタイガースがよりロック調なカヴァーをしていた(4)は、ブライアンのマリンバが切なく美しい名曲。
ガイドコメント
『アフターマス』といったらこの英国盤の方が好きな人も多い、1966年4月リリース作品。もちろん、米国盤と曲目が違います。全曲ジャガー=リチャーズ作品で、全英1位を記録(英国での4枚目)。
収録曲
01MOTHER'S LITTLE HELPER
ピルや母娘間の世代ギャップなど、当時のポップ・ソングとしてはかなり異色となる題材を取り上げた哀愁漂うナンバー。終始深刻な雰囲気で進行しつつ、なぜか最後は元気に掛け声で幕。12弦ギターの音色も絶妙だ。
02STUPID GIRL
彼らの女性に対する斜に構えたスタンスが体現されたかのような歌詞は、町行く気取った女たちへの罵詈雑言の嵐。中盤以降でのモータウン・サウンドの影響大な展開&軽妙なギター・ソロも魅力的なビート・ナンバー。
03LADY JANE
ハープシコードとダルシマーが中世世界のムードを醸すフォーキー・ソング。紳士で真摯な甘いムードの楽曲だが、歌詞では複数の恋人に「高貴な女性と結婚することにしたので君とはお別れ」と告げる人でなしぶりが炸裂。
04UNDER MY THUMB
黒人音楽からの影響をバンド独自のR&Bフィーリングとして楽曲化した名曲。土台にモータウン・サウンドがあるのは明白だが、そこにマリンバを加えアレンジするセンスがお見事。歌詞は女性蔑視だとして世間から非難。
05DONCHA BOTHER ME
真似をするな、お前のやり方を見せろと歌う歌詞が、まるでカヴァー曲中心だった前作までの自分たちに向けられているようなバンド自作のブルース。ブライアン・ジョーンズの弾くスライド・ギターが楽曲を本格派ムードに。
06GOING HOME
溜めに溜めた男の帰宅しヤリまくるまでが明快に描かれた性的欲求不満解消ソング。当時のポップ・ソングとしては異例の長さとなる都合11分超の遅漏ブルースは、ルーズでねっとりとした冗漫寸前の曲調がたまらない。
07FLIGHT 505
飛行機の座席を予約し離陸し海に不時着するまでが軽妙に綴られたロックンロール・ナンバー。イントロでほんの一瞬「サティスファクション」化するイアン・スチュワートのピアノが、終始曲調をホンキー・トンクな趣に。
08HIGH AND DRY
恋人に金目当ての交際だと気づかれた主人公が、ならば今度は貧乏な娘と付き合おう、と懲りずに嘆くナンバー。渡米し体得した米国ルーツ音楽を、あくまでストーンズ流に咀嚼し調理したカントリー・ブルースの小品だ。
09OUT OF TIME
ジャック・ニッチェも参加した華やかなポップ・ナンバー。四隅を音で埋め尽くす凝ったアレンジはフィル・スペクターの影響が色濃く、それゆえ従来の彼らにはないアメリカ西海岸経由のR&Bフィーリングが楽しめる。
10IT'S NOT EASY
女に逃げられた男が、ひとり暮らしは楽じゃないと歌うチャック・ベリー直系のロックンロール・ナンバー。キースやミックの魅力に隠れがちだが、ビル・ワイマンが黙々と弾く虚無的な風情のベースも地味にまぶしい。
11I AM WAITING
歌詞中の“遅かれ早かれ”にかけたわけでもあるまいが、スローなパートと、ややアップテンポなパートとが幾度となく交錯する実験的な曲。先鋭的な曲構成が、含みを持たせた歌詞との相乗効果で今も楽曲の鮮度を保持。
12TAKE IT OR LEAVE IT
アコースティック・ギターやハープシコードをフィーチャーした、(歌詞はさておき)非常にお行儀良い佳曲。フォーキーなムードが聴くほど味わい深いこの曲は、のちにサーチャーズにカヴァーされたことで魅力が本格開花。
13THINK
数々のカヴァーをこなしてきた彼らによる自作のR&Bスタイル・ナンバーは、あまりに本格的なR&B愛あふれる佳曲。彼らのヒット曲にある、山あり谷ありサビもありな明快さとは異なった、なだらかに盛り上がる曲調が新鮮。
14WHAT TO DO
「何したらいいのかわからない」と連呼する歌詞を、50年代ドゥーワップ風に歌ったニート生活脱出願望ソング。のん気な曲調は、あまりに当時のストーンズらしからなかったのか、米版『アフターマス』では除外された。