ミニ・レビュー
67年7月リリースの通算10枚目。当時のフラワー・ムーヴメントに乗じてヒット曲を寄せ集めた内容なので、純粋なオリジナル・アルバムとは言いがたい。が、ボブ・ラディックのリマスターによって非常にクリアな音の粒だちを実現しているのが新鮮。
ガイドコメント
これまでのダーク・トーンの顔ジャケから一転、へろーんとした茎のイラストにメンバーの顔が……という1967年6月リリースの米国10枚目(米国のみ)、ベスト的性格のコンピレーション盤。
収録曲
01RUBY TUESDAY
ジャガー=リチャーズが新たな領域に踏み込んだ意欲作。ブライアンのフルートとリコーダーをフィーチャーしたアコースティックなサウンドをバックに、詩を読むように歌うミックのヴォーカルとコーラスが美しい。全米チャートでNo.1ヒットを記録している。
02HAVE YOU SEEN YOUR MOTHER BABY, STANDING IN THE SHADOW?
ファズ・ギターを激しく掻き鳴らしまくる騒々しいロック・チューン。ほぼ全篇が騒々しいだけに中間部のスロー・パートがアクセントになっている。ジャック・ニッチェ編曲のホーン・セクションも効果的。英国では5位、米国では9位のヒットを記録した。
03LET'S SPEND THE NIGHT TOGETHER
ジャガー=リチャーズの会心作。イアン・スチュワートのピアノが先導する当時最新型のストーンズ流ロックンロール。ミックの饒舌なヴォーカルとポップなコーラスが性的な歌詞を陽気に、そして攻撃的に歌いまくる。全英チャートでは3位をヒットを記録。
04LADY JANE
ハープシコードとダルシマーが中世世界のムードを醸すフォーキー・ソング。紳士で真摯な甘いムードの楽曲だが、歌詞では複数の恋人に「高貴な女性と結婚することにしたので君とはお別れ」と告げる人でなしぶりが炸裂。
05OUT OF TIME
ジャック・ニッチェも参加した華やかなポップ・ナンバー。四隅を音で埋め尽くす凝ったアレンジはフィル・スペクターの影響が色濃く、それゆえ従来の彼らにはないアメリカ西海岸経由のR&Bフィーリングが楽しめる。
06MY GIRL
テンプテーションズの全米No.1ヒット。オリジナルにほぼ忠実なカヴァーで、ストリングスまで導入している。コーラスも含めて巧みにこなしているものの、オリジナルを超えているわけでもない。ミックが歌うこの名曲を聴きたい、というファンのための1曲。
07BACK STREET GIRL
ブライアンのアコーディオンをフィーチャーしたアコースティックなサウンドをバックに、ミックがひたすらジェントルに歌う。といっても、語り手が浮気相手に「家には電話するな」などと言っているような内容の歌詞だから、最後まで笑わずに聴くのは難しい。
08PLEASE GO HOME
敬愛するボ・ディドリーのジャングル・ビートと当時最新のサイケデリック・サウンドを組み合わせた実験的な曲。新兵器ムーグ・シンセサイザーの宇宙的な音も鳴っている。のちに発表される『サタニック・マジェスティーズ』の予告篇、と言えないこともない。
09MOTHER'S LITTLE HELPER
ピルや母娘間の世代ギャップなど、当時のポップ・ソングとしてはかなり異色となる題材を取り上げた哀愁漂うナンバー。終始深刻な雰囲気で進行しつつ、なぜか最後は元気に掛け声で幕。12弦ギターの音色も絶妙だ。
10TAKE IT OR LEAVE IT
アコースティック・ギターやハープシコードをフィーチャーした、(歌詞はさておき)非常にお行儀良い佳曲。フォーキーなムードが聴くほど味わい深いこの曲は、のちにサーチャーズにカヴァーされたことで魅力が本格開花。
11RIDE ON, BABY
ジャガー=リチャーズがクリス・ファーロウに提供した曲のセルフ・カヴァー。よくできたポップ・ソング。マリンバ、ハープシコード、パーカッションを使った洗練されたサウンドが時代を感じさせる。言ってみれば、1966年のサウンド。サマー・オブ・ラヴの前年。
12SITTIN' ON A FENCE
トゥワイス・アズ・マッチに提供した曲のセルフ・カヴァー。2本の生ギターによるアンサンブルをバックに、ミックが淡々と歌ってみせるフォーク・ソング。中間部ではブライアンのハープシコードを背景に、ミックとキースがヴォーカル・ハーモニーを披露する。