ミニ・レビュー
『ビートルズがやって来る ヤア!ヤア!ヤア!』に続く主題映画(原題『ヘルプ』)のサントラ盤で、65年の作品。とはいえ実際に映画に使われたのは7曲のみ。2曲を除きオリジナルで占められ、電子オルガンの使用や、アコースティックさが出てきた。
ガイドコメント
主演2作目となる同盟映画のサントラ盤。カントリー好きのリンゴがヴォーカルをとる「アクト・ナチュラリー」や、いまや音楽の教科書にも載っている「イエスタデイ」を収録する。1965年8月発表、11週連続全英1位を記録。
収録曲
01HELP!
1965年7月発表のシングル。コーラスで「ヘルプ!」と始まるインパクト十分の名曲。主演映画の主題歌として知られるが、ジョン・レノンがアイドルでいることへのプレッシャーを表現したものとしても有名。
02THE NIGHT BEFORE
映画のためにポールが書いた曲。魅力的なメロディを歌うポールのヴォーカルに、ジョンとジョージの後追いコーラスが絡む。サビでラテン調のリズムになる工夫もニクい。日本のみでシングル発売されたせいか、この曲のファンは多い。
03YOU'VE GOT TO HIDE YOUR LOVE AWAY
ボブ・ディランに刺激されてジョンが書いた曲。生ギターとフルートをフィーチャーしたビートルズ流フォーク・ロック・サウンドは翌年の名曲「ノルウェーの森」にも通じるもの。内省的な歌詞もその後のジョンの進化を予感させる。
04I NEED YOU
「ドント・バザー・ミー」に続くジョージの2作目のオリジナル曲。米国製ポップ・ソングの語法を踏襲した作風にはまだ個性は感じられないが、新兵器ボリューム・ペダルを使ったギター・リフなど、細部の工夫には彼らしさがうかがえる。
05ANOTHER GIRL
ポールが書いたロカビリー・チューン。凡手ならワン・コードで押し切るところだが、強引にでもメロディックなフックを挟み込む荒技はポールならでは。本来はジョージが弾くべきリード・ギターをポール自ら弾いてしまっている。
06YOU'RE GOING TO LOSE THAT GIRL
米国製ポップ・ソングから学んだノウハウを生かしたジョン主導の名曲。男っぽさとせつなさが同居したメロディ、ジョンの歌声にポールとジョージのコーラスが絡む展開、サビでの転調など、初期のビートルズらしさが凝縮されている。
07TICKET TO RIDE
エレキ・ギターのアルペジオとともに、タメたフレーズで刻まれるドラムのビート、ジョン・レノンのシャウトしたヴォーカルなどが魅力で、サウンド全体にへヴィな感触がある人気曲。アルバム『ヘルプ!』に収録。
08ACT NATURALLY
バック・オウエンスの1963年のヒット曲。「孤独な男が映画スターになる」という歌詞がよく似合うリンゴが歌っている。リンゴの声を真似たポールのハーモニーも楽しい。やがてこのカントリーの名曲はリンゴにとって生涯の十八番となる。
09IT'S ONLY LOVE
後年、作者のジョンが嫌いな曲として挙げたポップ・ソング。とってつけたような歌詞を嫌っていたようだが、詩的な表現のラブ・ソングと解釈すれば悪くない。ボリューム・ペダルを使ったジョージのギターが幻想的なサウンドを描出。
10YOU LIKE ME TOO MUCH
ダブル・トラックのヴォーカルにも初挑戦しているジョージの曲。ダブルでも淡白な彼の歌声にはカントリー調のサウンドがよく似合う。ポールとジョージ・マーティンの生ピアノやジョンのエレクトリック・ピアノが効果的なスパイスになっている。
11TELL ME WHAT YOU SEE
ポールが歌うラテン風味のポップ・ソング。他愛のないラブ・ソングで、歌詞もメロディも単純だが、それでも奥行きが感じられるところはさすが。ポールのエレクトリック・ピアノとジョンのラテン楽器ギロがサウンドの要になっている。
12I'VE JUST SEEN A FACE
ポールが歌うフォーク調の秀作。ポール、ジョン、ジョージが生ギターを弾き、ジョージは12弦ギターでソロも披露。英トラッドから米カントリーまでの伝統をも想起させ、ポールならではの工夫を凝らしたロカビリー・サウンドが楽しめる。
13YESTERDAY
レノン=マッカートニー名義ながら、ポール一人のペンによる世紀の名曲。寝ているときに浮かんだメロディから作られたもので、失恋の思いを丁寧に描き、ストリングスを加えたアレンジも品格を感じさせる。
14DIZZY MISS LIZZY
デビュー前からジョンが歌っていたラリー・ウィリアムスの曲。ジョンのクールなシャウトが凄まじい。オリジナルに近いアレンジだが、ハモンド・オルガンと12弦リッケンバッカーが加えられ、より洗練されたサウンドに仕上げられている。