ミニ・レビュー
60年代前半は日米英で同じアルバムの内容が違うことはよくあったが、このアルバムもそう。ストーンズの英国3枚目(米では4枚目)がついに初CD化(しかもモノラルときたもんだ!)。12曲中9曲がカヴァーだが、ストーンズのやんちゃなパワーが伝わる名盤。
ガイドコメント
アメリカから2ヵ月遅れの1965年9月にリリースされた英国盤。こちらにはやっぱり名曲「ハート・オブ・ストーン」が収録。米英日で微妙に収録曲や曲順が違い、まさにマニア心をくすぐるバンドです。
収録曲
01SHE SAID YEAH
ラリー・ウィリアムスのロックンロールをよりテンポ・アップしてカヴァー。勢いのある演奏でミックのヴォーカルも乗りに乗っているし、キースとビルのコーラスも楽しい。オリジナルのサックスのパートで登場するシャープなギター・ソロが秀逸。
02MERCY, MERCY
ドン・コヴェイのヒット曲をカヴァー。若きミックの歌声は本家の黒人シンガーにも負けないほどブラックだが、ブライアンの裏声コーラスがその黒っぽさをより強調している。粘り腰のリズム・セクションも含めて、本格的なR&Bサウンドが堪能できる1曲。
03HITCH HIKE
マーヴィン・ゲイのヒット曲の装飾を剥ぎ取り、原曲の骨格だけを残して、よりR&B調のシンプルなサウンドでカヴァー。リフレインの多い単純な曲だが、ミックのヴォーカルにはリフレインでさえも楽しみにさせてしまう不思議な魅力がすでにある。
04THAT'S HOW STRONG MY LOVE IS
O.V.ライトやオーティス・レディングが歌ったサザン・ソウルの当時最新の名曲をカヴァー。イアン・スチュワートのオルガンを含むストーンズの強力なR&Bサウンドをバックに、乗りに乗っている若きミックのソウルフルなヴォーカルがたっぷりと堪能できる。
05GOOD TIMES
サム・クックのヒット曲をカヴァー。原曲もポップなR&Bだが、ストーンズのヴァージョンはよりポップ。軽快なビートに乗って陽気に歌われるこの曲は、初期ストーンズによるカヴァー・ヴァージョンとしては最もR&B色が稀薄なもののひとつだ。
06GOTTA GET AWAY
ジャガー=リチャーズのオリジナル曲。男が女に別れを告げる唄。ゆったりとしたミディアムのビートに乗って、ミックのヴォーカルが自由に歌いまくる、という曲調が新鮮。ミックが徐々にバンドの中心になりつつあった事実を象徴するような1曲。
07TALKIN' 'BOUT YOU
チャック・ベリーのロックンロールを大胆にテンポ・ダウンさせたカヴァー。ブルース調のアレンジで、ミックが絞り出すようなヴォーカルを聴かせてくれる。コーラス、ギター、ピアノなど、サウンドの細部の工夫にもバンドの成長の跡が見られる。
08CRY TO ME
ミックのソウルフルなヴォーカルをフィーチャーしたバラード。ソロモン・バークのヴァージョンが有名だが、ストーンズはベティ・ハリスのスロー・ヴァージョンを参考にしたようだ。初期のストーンズ・ファンの間では人気の高い曲のひとつだった。
09OH BABY (WE GOT A GOOD THING GOIN')
テキサス出身の女性ソウル・シンガー・ソングライター/ギタリスト、バーバラ・リン・オーゼン、1964年のヒット曲をカヴァー。オリジナルよりもさらにテキサス臭いリズム&ブルースに仕上げ、ミックのソウルフルな歌声も冴えわたる。
10HEART OF STONE
ジャガー=リチャーズのオリジナル曲。ミックのソウルフルなヴォーカルを堪能できるR&B調のバラード。キースのギター・ソロも個性を発揮している。米国では1964年に5枚目のシングルとしてリリースされ、全米チャート18位のヒットを記録した。
11THE UNDER ASSISTANT WEST COAST PROMOTION MAN
ナンカー・フェルジ名義になっているが、原曲はバスター・ブラウンの「Fannie Mae」。最初の米国ツアーでの宣伝担当者をモデルにした歌だと言われている。ブライアンのマウスハープをフィーチャーしたシャッフル・ビートのブルース・ナンバー。
12I'M FREE
ジャガー=リチャーズのオリジナル曲。自由を求める若者たちの代表だった当時のストーンズにふさわしい「俺はやりたいことをやっている」という歌詞をミックが誇らしげに歌う。ビートルズの「エイト・デイズ・ア・ウィーク」によく似た箇所があることでも有名。