ミニ・レビュー
やっと「抱きしめたい」をCDで聴くことができた。それもドイツ語ヴァージョンまでも。これで公式にビートルズ作品として発表されたもののほとんどをCDで聴けるわけだ。Vol.1は62年〜65年、Vol.2は65年〜70年に発表された曲で構成されている。同時代にこれらのシングル曲を聴いた世代にとって総てがここから始まったという思いがわくかもしれない。時代の気分を見事に先取りしていたことを再確認させるビートルズの変容の歴史を伝える2枚のアルバムがこれ。
収録曲
01LOVE ME DO
記念すべきデビュー曲。ポールがクォリーメン時代に書いた曲だが、サビにはジョンも関わっている。リード・ヴォーカルはポール。よりブルージィなサウンドにするために、ジョンがハーモニカを吹いている。これはリンゴがドラムスを叩いているヴァージョン。
02FROM ME TO YOU
1963年発表。ハーモニカのフレーズが印象的なビートルズ初期の名曲。英国ツアーのさなか、移動中のバスのなかで急いで書かれたというジョンとポールの合作で、途中からGマイナーに展開してゆくコード進行も新鮮。
03THANK YOU GIRL
ジョンとポールの共作曲で、二人がヴォーカルをシェアしている。応援してくれるファンの女の子たちに感謝の気持ちを伝えるために書かれた曲のため、笑っちゃうほど直球のラブ・ソング。シングル「フロム・ミー・トゥ・ユー」のB面に収録。
04SHE LOVES YOU
05I'LL GET YOU
ジョンとポールの共作曲で、ヴォーカルも二人でシェア。ジョンはハーモニカも披露している。歌も演奏も過不足がない良質のポップ・ソングだが、ビートルズのシングルとしてはやや弱かった。シングル「シー・ラヴズ・ユー」のB面に収録。
06I WANT TO HOLD YOUR HAND
07THIS BOY
ジョン、ポール、ジョージによる3声の美しいヴォ-カル・ハーモニーをフィーチャーしたドゥーワップ調の曲。初期のビートルズがコーラス・グループとしても優秀だったことがよくわかる。シングル「抱きしめたい」のB面に収録。
08KOMM, GIB MIR DEINE HAND
EMIのドイツ支社オデオン・レーベルからの要請で録音されたドイツ語版。フランス公演中にパリで録音された。リズム・トラックは英語版に手拍子を重ねたもの。ジョンやポールが歌うドイツ語の語感を楽しむことはできる。西ドイツのチャートでは1位を獲得。
09SIE LIEBT DICH
ドイツ語版「抱きしめたい」のB面に収録。A面曲と同日のパリ録音。すでにオリジナル・テープは処分されていたため新たにバック・トラックから録音し直した。英語版よりもやや速いテンポで、よりライヴ・ヴァージョンに近い演奏。
10LONG TALL SALLY
デビュー前からポールの十八番だったリトル・リチャードのカヴァー。ライヴで鍛えられているから一発録りでも文句なしの名演。最初からフル・スロットルで突っ走るポールのヴォーカルが圧巻だ。最初のギター・ソロはジョンで、2回目のソロがジョージ。
11I CALL YOUR NAME
ジョンが15歳の時に書き始め、1963年に完成させた。ビリー・J.クレイマー&ダコタスに提供した曲で、他者に提供後にビートルズが録音した唯一の曲。当時のビートルズ・ナンバーとしては最も成熟した印象の1曲。間奏のギターがスカのリズムを刻んでいる。
12SLOW DOWN
ジョンの十八番だったラリー・ウィリアムスのカヴァー。ギター、ベース、ピアノがユニゾンでドライブする軽快なビートに乗って、ジョンならではの硬質のシャウトが炸裂。ビートルズが最高のロックンロール・バンドだったことを思い知らせてくれる。
13MATCHBOX
リンゴが歌うカール・パーキンスのカヴァー。リンゴの歌声はぶっきらぼうに聴こえるが、独特の味わいがあり、憎めない個性もある。ジョンとジョージのツイン・リード・ギターも楽しめる。英国滞在中のパーキンスが見守る前で録音された曲のひとつ。
14I FEEL FINE
1964年発表のシングル。ギター5弦のA音をフィードバックさせたイントロが画期的な名曲。ヘヴィなリズム・パターン、ジョン・レノンのシャウトぎみのヴォーカル、清涼なコーラス・ワークなども印象的。
15SHE'S A WOMAN
1964年発表。ポール・マッカートニーの力強いリード・ヴォーカルが冴えたR&B風ナンバー。イントロの高音のギター・カッティングのアクセントが曲中に入ると違うタイミングで聴こえてくるなど、おしゃれなアレンジ。
16BAD BOY
ライヴでもジョンの持ち歌だったラリー・ウィリアムスの曲。コテコテのアメリカン・スラングで描かれた米国版不良少年グラフィティを英国版不良少年ジョンが歌う。ジョージのリード・ギターも善戦しているが、やはりジョンのヴォーカルの迫力は圧倒的。
17YES IT IS
ジョンが書いたバラードの佳作。3声のヴォーカル・ハーモニーをフィーチャーした編曲が泣かせる。ボリューム・ペダルを使ったジョージのギター・プレイがロマンティックなムードを強調している。シングル「涙の乗車券」のB面に収録。
18I'M DOWN
「ロング・トール・サリー」を意識して書いたポールのロックンロール・チューン。パワフルなシャウトに煽られたせいか、トレモロアームを駆使したジョージのギター・ソロも、ジョンのハモンド・オルガンも、それぞれにワイルドなプレイを披露している。